人材不足と人材獲得競争が過熱化している昨今は、転職者の初任給の状況にも影響を与えているのだろうか?
そんななか、マイナビ(東京都千代田区)が2023年4月25日に発表した「正社員の平均初年度年収推移レポート」と「正社員求人件数・応募数推移レポート」における2023年1-3月期の総評を見てみると、平均初年度年収は455.9万円で、2018年平均から27.7万円の増加している実態が明らかになった。
また、求人件数は調査開始時期の2018年と比較して「148.4%」となり、同社キャリアリサーチラボ研究員の朝比奈あかり氏は「今後も企業の人材獲得競争は高まり、特に経験者の採用が難しくなると予想しています」とコメントしている。
求人件数は2018年比で「148.4%」 昨年同期比でも18.2ポイントの増加
この調査は2023年の1月から3月における、総合転職情報サイト「マイナビ転職」に掲載開始された求人情報、応募数から、雇用形態が正社員以外のデータを除いて集計したもの。対象エリアは全国47都道府県としている。
はじめに、正社員の平均初年度年収は455.9万円(未経験者求人:427.1万円、経験者求人:517.0万円)となった。
これは、調査を開始した2018年と比較すると、27.7万円の増加となる。未経験者求人は17.7万円の増加、経験者求人は29.1万円の増加になった。
同社では
「特に経験者求人の給与待遇が上がっており、企業が即戦力採用に注力している様子がうかがえる」
とコメントしている。
続いて、求人件数は2018年と比べると「148.4%」で、2022年1-3月平均である「130.2%」から18.2ポイント増加した。
同社のコメントをみると
「3カ月ごとの結果をみると、2022年から増加した求人件数は高止まりしており、昨今の人手不足を背景に、企業の人材獲得競争は今後も激しいものになると予想される。今後は給与待遇の改善やオフィス環境整備など、人材への投資を重要視する企業がさらに増えると考えられる」
としている。
また、求人の募集比率は、未経験者求人が2022年平均比1.6ポイント増の「67.9%」、経験者求人が「32.1%」となった。
未経験者求人比率は2021年まで減少傾向だったが、2022年では増加に転じ、人手不足感の高まりから、募集の条件を未経験にまで広げる企業が増加しているようだ。
昨年同期比で給与の増加が大きいのは「IT・通信」、「金融・保険」、「マスコミ・広告・デザイン」!
つぎに、正社員の平均初年度年収を業種別にみると、「IT・通信・インターネット」が最も高く521.4万円、次いで「金融・保険」が518.9万円、「不動産・建設・設備」が490.1万円となった。
さらに、2022年平均と比較すると12業種中8業種で増加している。
2022年平均と比較して増加額が最も高かったのは「金融・保険」で17.2万円増。次いで「IT・通信・インターネット」が7.6万円増、「マスコミ・広告・デザイン」は4.5万円増となった。
また、求人件数は2018年平均と比較しすべての業種で増加した。最も増加している業種は「環境・エネルギー」で「180.6%」、次いで「商社」「メーカー」で「167.4%」となった。
業種別でみると、未経験者求人の割合が半数以上となったのは、12業種中11業種に上る。そのうち、未経験者求人割合が高い業種は「運輸・交通・物流・倉庫」で「84.4%」、「サービス・レジャー」「環境・エネルギー」「商社」でも8割を超えた。
未経験者求人割合をみると、最も増加した業種は「商社」で5.8ポイントの増加、次いで「環境・エネルギー」が5.2ポイントの増、「IT・通信・インターネット」が3.6ポイントの増となった。
一方、未経験者求人が少ない業種は「IT・通信・インターネット」「金融・保険」「メーカー」だった。特に「金融・保険」は2022年平均から経験者求人が3.8ポイント増加した。
なお、キャリアリサーチラボ研究員の朝比奈あかり氏は次のようにコメントしている。
「2023年1-3月は前年同時期に比べて求人件数が大幅に増加し、企業の採用意欲に高まりが見られました。未経験者求人の増加と平均初年度年収の増加がともに起こっていることから、企業は給与待遇改善をはじめとした人材への投資を進め、人材獲得競争が激化していると推察されます」
「特にこの傾向が見られる業種は『IT・通信・インターネット』で、人材獲得に積極的な企業が多いと考えられます。求職者は動いているものの、企業の採用意欲はそれ以上に高まっている傾向にあります。
そのため今後も企業の人材獲得競争は高まり、特に経験者の採用が難しくなると予想しています。
また、未経験者も即戦力に近い人材を獲得するために、人材要件の棚卸に注力する企業が増えていくと考えています」