通話、動画再生、ゲーム......私たちはスマートフォンからさまざまな楽しみを得ているが、どのサービスが一番いい気持ちにしてくれるだろうか。そんな、曖昧模糊(あいまいもこ)とした「体感」を数値化して、日本の大手携帯電話4社を比較した調査がある。
モバイル・ネットワークの分析を手掛ける英国専門調査会社「Opensignal」(オープンシグナル)が2023年4月26日に発表した「日本:モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」によると、日本ではソフトバンクのユーザーが、一番「幸せな体感」を享受していることになるそうだ。いったい、どういうことか?
動画、ゲーム、ダウンロード速度、通信環境など15の項目で分析
「Opensignal」(本社・ロンドン)は、モバイル・ネットワークのユーザー体感を定量化して分析する英国の独立系調査会社だ。ユーザーが実際に体感している体験を独自の方法で数値化して、モバイルサービスを理解する指標にする事業を行なっている。
日々、世界中の1000万以上のデバイスから数十億もの個別測定を収集しており、日本企業も毎年調査しているという。
今回は、日本の大手携帯電話4社(NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイル)を対象に、「ユーザー体感」はどこが一番よいかを、15の項目で比較分析して評価した。
日本各地で、2022年12月1日から2023年2月28日までの90日間にわたって調査し、100点満点で採点、それぞれの項目ごとに「首位」を選んだ。15の項目とは次のとおりだ【図表1】。
【全体の体感】(1)動画体感、(2)ゲーム体感、(3)音声アプリ体感、(4)ダウンロード・スピード体感、(5)アップロード・スピード体感
【5G(第5世代移動通信システム)の体感】(6)5G動画体感、(7)5Gゲーム体感、(8)5G音声アプリ体感、(9)5Gダウンロード・スピード体、(10)5Gアップロード・スピード体感
【通信環境】(11)利用率、(12)5G利用率、(13)5G到達率
そして総合的評価として、
【一貫性】(14)一貫した素晴らしい品質、(15)中核となる一貫した品質
の15項目だ。
ダウンロードはドコモ、アップロードは楽天、ゲームはソフトバンクが独壇場
まず、総合的評価では、前回(2022年4月)のレポートで「一貫した素晴らしい品質」で首位となったのはNTTドコモだったが、今回はソフトバンクが「一貫した素晴らしい品質」(87.4点)と「中核となる一貫した品質」(94.1点)の両方で優勝した【図表2】。これは、「日本で最も安定したモバイル・ネットワーク体験を享受しているのは、ソフトバンク・ユーザーということを意味する」という。
次に、個別の項目をみていくと――。
動画再生などの「5G動画体感」は、ソフトバンク(78.6点)の単独首位だが、「全体の動画体感」は、統計的に同点(100点中72~72.4のスコア)でNTTドコモとソフトバンクがともに首位という評価だ【図表3】。ただし、「5G動画体感」では、「素晴らしい」(78点以上)と評価されたのはソフトバンクのみだった。
平均ダウンロード・スピードでは、NTTドコモの独走が目につく。NTTドコモは「全体のダウンロード・スピード体感」(52.8Mbps=メガビーピーエス)と「5Gダウンロード・スピード体感」(204Mbps)の両方で1位だ【図表4】。
一方、平均アップロード・スピードでは、楽天モバイルの強さが目立つ。「5Gアップロード・スピード体感」(29.5Mbps)と「全体のアップロード・スピード体感」(18.3Mbps)の両方で1位に。特に、「全体のアップロード・スピード」である18.3Mbpsは、2位ソフトバンク(9Mbps)の2倍以上の速度を誇る【図表5】。
さて、「ゲーム体感」をみていくと、ソフトバンクの力が際立つ。「全体のゲーム体感」(82.3点)と「5Gゲーム体感」(89.1点)の両方で首位。特に、「5Gゲーム体感」では、「素晴らしい」(85点以上)の評価となり、ほぼ同点2位のauと楽天(82.4~83点)を大きく引き離した。4位のNTTドコモに至っては77.4点に沈んだ【図表6】。
4社すべてが各部門の首位を分け合い、競争は激化
今回の調査結果について、「Opensignal」のイアン・フォッグ分析担当副社長はこうコメントしている。
「日本のモバイル市場は引き続き進化中です。前回のリポートから半年間に日本の大手3社で、ユーザーの5G接続時間(5G利用率)が大幅に増加しました。5G利用率については、auが5.5%から9.3%、ソフトバンクが5.9%から8.4%、NTTドコモが4.5%から6.1%と、3社が大幅に向上し、わずか6か月で驚異的な上昇を見せています」
「5G利用率と5G到達率の増加は、ユーザーが5Gで体感する、より良いスピード、マルチプレイヤー・モバイル・ゲーム、動画ストリーミングをより頻繁に体感できるようになったことを意味しています。本リポートでは、4社すべてでOpensignalアワード受賞となり、日本における競争が激化していることを示しています」
「ソフトバンクが6つの単独受賞と2つの共同受賞で、再び最多受賞となり、NTTドコモが3つの単独受賞と2つの共同受賞で次点となりました。楽天はアップロード・スピードで賞を2つ獲得し、auは全体の音声アプリ体験と5G到達率で共同受賞、5G利用率を単独受賞しました」
今後、さらに大手4社の競走が激化して、サービス内容の向上につながればよいが...。(福田和郎)