外資系の超高級ホテルの日本進出が相次いでいる。
2023年4月初旬には東京・八重洲のJR東京駅前にイタリアの高級宝飾品ブランド、ブルガリが手がける「ブルガリ ホテル東京」が開業した。世界的なラグジュアリーリゾートとホテルを展開する「アマン」系列の「ジャヌ東京」も今秋、東京・虎ノ門にオープンする予定だ。
新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、訪日外国人客(インバウンド)が急速に回復する中、外国人富裕層の取り込みを図る動きが今後も強まりそうだ。
大阪もIR整備の一環で「超高級ホテル」が不可欠に 水面下での動きも?
「ブルガリ ホテル東京」は、新複合ビル「東京ミッドタウン八重洲」の40階から最上階の45階に開設された。客室は全98室で、宿泊料は1泊25万円(税とサービス料は別)から。
44階の最高級客室「ブルガリスイート」は400平方メートル超の広さで、1泊400万円からとなっている。最上階には都心が一望できるバーラウンジも設けられた。
「ジャヌ東京」は、森ビルが開発している「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の一環として開設される。全122室で、55平方メートルのデラックスルームから、284平方メートルの「ザ・ジャヌスイート」まであるという。
ジムや温泉プールなどを備えたウエルネス施設は約4000平方メートルに及び、「ウエルネス施設としては、東京のラグジュアリーホテルで最大規模になる」としている。
一方、カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備計画が4月に認定された大阪市にも超高級ホテルの開業が増えるだろうと予想されている。
カジノについては反対の声も根強いが、「実際にIR整備が進むとしたら、世界中からやってくる富裕層をもてなすための超高級ホテルは不可欠だ」とされるからだ。すでに、外資系のホテル事業者が水面下で動いているとも言われている。
課題はスタッフの人手不足...人材の奪い合いに、どう対応?
これまで日本国内には富裕層向けの超高級ホテルが少なく、観光立国を目指すうえで大きな障害だと言われていた。
海外の富裕層は滞在するホテルを重視するといい、「好みのホテルがなければ、ラグジュアリー層はその国にはやって来ない。彼らが来なければ、日本で落としてくれるお金も大きくならない」(ホテル事情に詳しい研究者)ためだ。
今、超高級ホテル建設が加速しているのは、まさしく、こうした事情に対応するためだろう。
ただ、問題なのは、それが外資系ばかりであること。「1990年代以降、海外のホテルチェーンが日本に入ってきて、高級ホテル市場を席巻してしまった。このため日本のホテル業界は開発力を失っている」(同)とされる。
さらに、先行きには人手不足という大きな課題が控える。インバウンドの回復に伴い、ホテルや旅館業は活況だが、人手を集められず、空室のまま機会を逸するケースが実際に多発している。
特に、超高級ホテルとなれば、質の高いサービスを提供できる優秀な人材が欠かせず、「すでにビジネスホテルクラスでも人材の奪い合いになっているのに、高級ホテルが増えたらどう対応していくのか」(業界関係者)と不安視する声も出ている。(ジャーナリスト 済田経夫)