火力発電所で回収したCO2が原料になる「イーフューエル」で「排出実質ゼロ」に ただし、生産コストが高く
イーフューエルは走行時にCO2を排出するが、火力発電所で回収したCO2を原料にするため、差し引きで「排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)」とみなされる。大気中のCO2を回収し、再生可能エネルギーで水を電気分解した水素と合成すれば、究極の脱炭素燃料となる。いずれも技術的には可能だ。 ただ、大きなネックがある。生産コストの高さだ。
経済産業省の試算では、国内の水素でイーフューエルを製造した場合は1リットル約700円、再生可能エネルギーが安い海外で製造した場合でも約300円になり、ガソリン価格の2~5倍という高さだ。
ガソリンスタンド網など既存のインフラがそのまま使えるメリットはあるが、それではカバーできない高価格というのが現状だ。
もっとも、将来的に使用量の増加に歩調を合わせて技術革新を含め、コスト低減を図るのが、新素材などの常道だが、イーフューエルは生産量が限られ、生産・消費の拡大と価格低下という好循環を、現時点では見通しにくい。
こうしたことから、「EUのEV化の大きな流れは変わらないだろう」(経産省筋)とみられる。
業界関係者は「鋤で乗る人が多いポルシェ911のオーナーであれば、イーフューエルがガソリンに比べ高額だったとしても、負担に応じるというように、限られた需要が中心になっていくだろう」と指摘する。