「1年から1年半のレビュー」には、植田色がにじんでいるのか?
一方、「1年から1年半程度の時間をかけて、多角的にレビューを行うこととした」という声明文の箇所には「植田色を滲(にじ)ませた」と評価するのは、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「植田日銀総裁は初回の会合で政策変更を見送り:フォワード・ガイダンスを修正、1年から1年半で政策レビューを行う」(4月28日付)のなかで、こう指摘する。
「この文言は、政策の見直しは直ぐには実施されない、というメッセージを金融市場に送る狙いもあるのだろう」
「植田総裁は、当面は金融緩和状態を維持する考えであるが、その中で、異例の金融緩和(非伝統的な金融緩和)がもたらす副作用を減らすような枠組みの見直しは実施するとみられる。それは、ここでいう『レビュー』を踏まえて実施されるのだろう」
「筆者(=木内登英氏)はマイナス金利解除、YCC廃止などの本格的な金融緩和の枠組みの見直しは、2024年後半以降になると考えている。ここでいう1年から1年半程度という時間軸は、それと整合的であるようにも思える」
そして、今後の日銀の動きについてはこう予想する。
「『レビュー』で政策の副作用、問題点を洗い出し、金融緩和状態を維持しつつも副作用を軽減する形で、金融緩和の枠組みを見直していく、というのが植田総裁の向こう5年の基本的な姿勢になるのではないか」
「ただし、1年から1年半後に政策の副作用、問題点を一気に総括する、ということにはならないだろう。その場合には、枠組みの見直しが一気に実施されるとの観測から、金融市場が混乱するリスクが高まるからだ」
「日本銀行は、個々の政策の枠組みについて随時レビューを行い、枠組みの見直しを、相応に時間をかけて段階的に行うことになるだろう。過去に日本銀行が行ってきた『検証』、『点検』などと同様に、『レビュー』の結果が示される際には、それは政策の修正がほぼ同時に実施されることになるのではないか」
(福田和郎)