企業内でも新規のデジタルツールを導入する会社も増えているものの、そんなデジタルツールへの不安や不満の声が聞こえている。
デジタル・アダプション・プラットフォーム(DAP)を推進するWalkMe(東京都港区)は日経BPコンサルティングの協力で2023年4月13日に「デジタルツールの利用状況調査レポート2023」を発表した。
そのなかでは、デジタルツールの重要性を85%の経営者・担当者が認識している一方で、生産性向上に寄与していないと回答する人は前回調査から12ポイント上昇し、60%となった。
同社では、「複雑で使いにくいデジタルツールは、ユーザーに不満を抱かせるだけでなく、パフォーマンス低下をもたらし、業務効率の低下など、企業の成長に大きな悪影響を与えることが考えられます」と現在のデジタルツールの問題点を指摘している。
デジタルツールの活用は重要な経営課題「85%」 目的は「業務効率化」「テレワークの推進」「社員EXの向上」
この調査は、「日経ビジネス電子版」読者を対象として、勤務先が従業員500人以上で、地位・役職が「契約社員」「その他」は除外して、有効回収数の419人を得た。Webアンケート調査で期間は2022年10月3日から16日まで。
なお、調査対象者の属性には企業内で営業管理システム、データ分析、コラボレーションツールなど、デジタルツールを活用する立場の従業員を対象にしている。
はじめに、デジタルツール活用の重要性を尋ねてみると、「85%」を超える回答者が重要な経営課題であると認識していると答えた。
一方で、一般社員の立場でも、デジタルツールの活用が重要であると考えている人は「80%」を超えており、その数値は従業員規模が大きくなるに従って上昇している。
つぎに、デジタルツール活用の目的をきいてみると、500人規模から1万人以上の企業すべてで「業務の効率化」が目的という回答が「75%」を超える結果になった。
そのほかの理由は規模によってばらつきがあるが、500人以上1000人未満の企業では「経費削減」が目的とする回答が「50%」を超え、1000人以上2000人未満の企業では「テレワークの推進」を目的としている結果が目立った。
また、従業員数2000人以上の企業では「社員エクスペリエンス(EX)の向上・優秀な人材の確保」を目的に上げる人の比率が、従業員2000人未満の企業と比較すると顕著に高く、最大で28ポイントの差が出るまでになった。
デジタルツールが生産性向上につながっていない「60%」 操作が不安な人も31.7%...前回の2倍に
続いて、デジタルツールの導入が生産性向上につながっているかを質問すると、「つながっていない」と認識している人は「60%」となり、前回の2020年調査では「48.4%」であり、この2年間で約12ポイント上昇したことになる。
また、デジタルツールの習熟度に不安があるかを尋ねると、前回調査(2020年)では習熟度が「あまり習熟していない」、「習熟していない」と回答した人は全体の「15.2%」だったが、今回は「31.7%」と約2倍となる結果になった。
同社の分析では
「デジタルツール活用が生産性につながっていないと感じる理由の一つとして、システムを正しく使えていない可能性が考えられます」
としている。
デジタルツールへの不満「マニュアルが煩雑」「誤入力の補正がない」
さらに、デジタルツールの使い方がわからない場合、3人に1人が1カ月に1回以上、10人に1人が1週間に1回以上、「使用を断念してしまう」「入力がいい加減になる」と回答しており、不正確なデータが入力されている可能性がある。
デジタルツールを使用するときの不満点についても調査。「マニュアルが大量にあり使いこなせない、マニュアルがわかりにくいため解決効率が悪い」と回答する人の数は「49.6%」に上った。
他方、調査時点で「約70%」の人が週2日以上の在宅勤務をしており、「約30%」の人が「すぐに相談できる人がいなくて困る」という点を指摘している。
最後に、今後開始してほしいサポートの中には、「入力や選択など提携操作を自動実行するなど『入力間違いを起こせない』ツールの利用」(55.4%)、「用語説明や入力ルールを操作画面上に表示するなど『操作に迷わせない』ツールの利用」(54.2%)の順に高く、「スキルを持つ推進役の配置・育成」(約4割)が3番目となった。
ほかにも、前述の3点と少し差を開けて、「ヘルプデスク設置」、「講習会などトレーニング」、「専門スタッフによるインストールや初期設定」は約2割程度の回答となった。
同社ではまとめとして次のように答えている。
「デジタル庁の発足以来、企業においても積極的にデジタル施策に取り組む姿勢が一段と強まっていますが、前回の調査(2020年8月)と比較して、デジタルツールの導入が生産性向上につながっていないと認識する回答率が約12ポイント増加し、デジタルツールの習熟度に不安を抱える人も約2倍に増加していることが分かりました。
また、複雑で使いにくいデジタルツールは、ユーザーに不満を抱かせるだけでなく、パフォーマンス低下をもたらし、業務効率の低下など、企業の成長に大きな悪影響を与えることが考えられます」