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コマツの「DANTOTSU」...カーボンニュートラルを、ESGと収益向上の両立で実現【脱炭素銘柄をねらう】

   建設・鉱山機械や産業機械などの事業を展開するコマツ(小松製作所、6301)の「コマツのカーボンニュートラルへの取り組みと水素技術の活用」に、驚いた。

   2023年3月9日に開かれた「イワタニ 水素エネルギーフォーラム東京」(東京国際フォーラム)で、コマツの特別講演があった。そこでコマツの目指す、ありたい姿が「DANTOTSU」というのだ。

   「ありたい姿」の実現を、「カーボンニュートラル」への挑戦で目指すというコマツ。講演会では、そのロードマップを丁寧に説明してくれた。

2050年の「カーボンニュ-トラル宣言」を掲げる

   コマツは目指す「ありたい姿」は、「DANTOTSU Value 『ESG課題解決と収益向上の好循環を生み出す顧客価値創造』」として、中期計画(2022~24年度)の「外部環境の変化」、「成長戦略における主な重点活動」や、「経営目標」ではESG(環境、社会、ガバナンス)での課題解決による2050年のカーボンニュートラル宣言(チャレンジ目標)を掲げている。

   カーボンニュートラル宣言にある「よりクリーンな動力源への移行」として、(1)ハイブリッド(2)バッテリー式/有線式 電動(3)燃料電池(4)水素/バイオ燃料/e‐fuel内燃機関――と、開発に伴う移行過程を提示した。

   2050年のカーボンニュートラルに向けた「ロードマップ」では、「モノによる効率の改善」として機械の効率化や低排出カーボンレベルの向上(よりクリーンな動力源への移行)によるCO2排出量の削減を進めること。また、「コトによる効率の改善」として、「お客様の現場のあらゆる業務、施工、オペレーションの最適化・高効率化」によるCO2排出量の削減に取り組む。

   さらに、カーボンニュートラルに向けた「開発の方向性」では、2050年への工程として、非内燃機関(バッテリー車・燃料電池車)と内燃機関(ディーゼルエンジン車・水素「混焼」エンジン車・水素「専焼」エンジン車)の全方位で対応していくことを示している。

「DX」で成し遂げるカーボンニュートラル

   これらを踏まえ、「カーボンニュートラルへの取り組みの現状」では、一般土木、地表マイニング(採掘)、地下マイニング(採掘)の3分野に大別して、対象機器とその使用動力源を一覧にしている。

   本業の「建設・鉱山機械にとっての水素の重要性」について、5分類のエネルギー源(太陽光・風力・水力、原子力、バイオマス、化石燃料、副産物)と、電力と水素のエネルギー、6種類の動力源(有線式、バッテリー式、燃料電池車、ディーゼルエンジン車、水素混焼エンジン車、水素専焼エンジン車)を体系づけて、水素の重要性を説明。

   さらに、「カーボンニュートラル対応鉱山・建設機械への水素供給」では、乗用車・バス・トラック(自走して水素充填にいける)と、建設・鉱山機械(自走して水素充填に行けない、行き難い)などの事例をあげて、鉱山・建設機械の抱える問題点を説明して、「稼働現場にて高速に水素を供給できるシステムが不可欠」と結論づけている。

   こうした背景から、週刊東洋経済(2023年2月18日号)の「2023年版・信頼される会社CSR企業ランキング」で、コマツはCSR(企業の社会的責任)と財務の両データから「信頼される会社」を見つける「CSR企業ランキング」で、300社中16位と高い評価を得ている。

   それはそうだろう。カーボンニュートラルの実現を、自社の事業に落とし込み、事業変革(DX=デジタルトランスフォーメーション)へと昇華させるのはスゴイことではないかと思えた。

   企業が長期的に成長するためには、経営においてESGの3つの観点が必要だという考えのもと、コマツはESGへの課題解決と収益向上の両立を目標に取り組んでいる様子がうかがえる。このような積み重ねが、今日のコマツの業績を支えているのだろう。

   直近のコマツの株価は、4月27日付の終値で3291円。今年になってからの最高値は3499円(2023年3月8日)、最安値が2792円(2023年1月5日)だった。下落相場のとき、2600円前後で拾いたい。

   コマツは、これからも世界で勝ち残ることのできる企業ではないかと期待している。(石井治彦)

コマツ(6301)
年初来高値2023年3月8日●3499円
年初来安値2023年1月5日●2792円
直近 終値2023年4月26日●3291円