NHKは今年(2023年)4月1日から受信料を不正に支払わない人に対して、「割増金」を請求できる制度を導入したが、その「脅し効果」の影響からか、受信料を「駆け込み契約」する人が急増したことが明らかになった。
ネット上では、「NHK愛」にあふれる視聴者からも「規則を守らせることは当然だ」という賛成意見とともに、「せっかく良質な番組が多いのに、だからNHKは支持されない」と批判する意見が上がっている。
NHK会長「ご理解いただいてお支払いいただくのが本道」
受信料の割増金制度は、テレビを設置した月の翌々月の末日まで受信契約の申し込みを行なわなかったり、「不正な手段」で受信料を逃れたりした場合に、支払うべき受信料の2倍の割増金を上乗せして請求できる。つまり、計3倍の受信料を支払うことになるわけで、今年4月1日から制度が始まった。
NHKの「割増金」導入問題については、J‐CAST 会社ウォッチでは、「NHK、受信料割増金『該当したら一律請求ではない』...新会長の発言が火に油、ネット民が反発『個別に勘案するのは逆に不公平』『受信料の意義、納得できない』...」(1月26日付)などの記事で報じてきた。
NHKが2023年4月25日に公式サイトに公表した「2022年度の第4四半期業務報告」や、朝日新聞(4月27日付)の報道などをまとめると、NHKの受信契約件数が、1~3月で約11万件増えたことが明らかになった。
昨年4月以降、想定以上のペースで契約数の減少が続いていたが、今年4月に受信料の割増金制度が導入されることから、「直前に駆け込み契約が起きたとみられる」と朝日新聞は指摘。あるNHK関係者の話として、
「割増金制度についてメディアが相次いで報じ、そのアナウンス効果で契約が促されたのだろう」
というコメントを紹介している。
この結果、今年1月の段階では、2022年度の契約件数の減少見込み数を約43万件としていたが、最終的には前年度比10万7000件減にとどまり、4144万件となった。また、支払い率は前年度より0.6%減って79.0%となった【図表】。
ただ、割増金制度については、NHK幹部は「機械的に適用するものではない」という慎重な姿勢を強調している。NHK経営委員会の森下俊三委員長は、1月24日の定例会見後に、報道陣に「視聴者の理解を得て支払ってもらうのが筋。制度として導入するからと言って、むやみに使うというものではない」と述べた。
NHKの稲葉延雄会長も4月19日の定例会見で、「NHKの公共的価値や事業そのものをご理解いただいてお支払いいただくのが本道。形式的に割増金制度を適用するのではなく、ご事情をよく聞いて、NHKの状況をご理解いただくことを優先したい」と語った。
とはいえ、計3倍支払うことになる「割増金」のプレッシャー効果は十分あったということだろうか。
「民放で『時間の無駄だった』というドラマが多いなか、外れの少ないNHK」
ヤフーニュースコメント欄では、さまざまな意見が相次いでいる。
「NHKの戦略が狙い通りになった。実際割増金の請求は難しいと思う。なぜなら契約していない世帯のTVチューナー設置を証明しないと法的手段には出られない。勝手に家に上がることも出来ない。設置していても、いつから設置したかの証明は無理。だけど、本当の狙いは『テレビを持っている世帯が、割増金にビビって自主的に契約すること』。その狙い通りになってしまった」
「不安に思うなら、払ったほうが精神的にはよいかもね」
今回も、「NHKはスクランブル化すべきだ」という意見が圧倒的に多かった。しかしあえて、「それでも受信料を支払い続ける」という「NHK愛」にあふれる人々の声を中心に紹介したい。受信料を支払っている人が8割という実態を考慮してのことだ。
「私はNHKのドラマが秀逸で好きだ。『岸部露伴』もNHKだしね。映像の綺麗さと脚本の出来の良さ、俳優の選択、どれも一番とは敢えて言わないが、かなり好感触です。民放で『時間の無駄だった~』というドラマが多いなか、外れの少ない局のひとつですよ。
ドラマだけでなくバラエティーだって、オードリーやサンドなど好きな芸人さんもよく出ているし、山ちゃんとYOUの『ねほりんぱほりん』なんて結構泣いて見ていたりするよ。出演者を吟味して研究してみると、有料でも納得できますぜ。ちゃんと払えば見逃し配信もあるから、お得なサブスクなのだよ。知らないと、損しているってばよ」
「色んな意見があることはわかっていますが、私はNHKの番組がとても好きなので、受信料をなんとも思わず払っています。特にBSは大好きです。にぎやかな民放の番組を見ると疲れてしまいます。民放を見るのは映画と野球だけ。映画も最近は見なくなりましたね。ネットで見られるから。これからも特に不満なく払い続けると思います」
「まあ、1回見てみたらNHK? 民放とは全く質が違うよ」
「ルールが気に入らない時は、ルールを守ったうえで文句を言うべき。受信料を払っていない理由を正当化している人たちって、間違っていると思うね。払ってからから主張する権利があるけど、払っていないなら黙って静かにしておくべき。ルールはルール、決まったらまずは守るのが義務なんだって」
「まあ、1回見てみたらNHK? 趣味の合う番組だけでもいいと思う。民放とは全く質が違うよ。CMないし。スマホでもアプリでも、うまいこと料金取られているのに気づいてないだけなのだよ。民放でも芸人のギャラは、みんなが買っている商品価格に乗っているわけで、もし、民放の数が半分になったら消費税半分ぐらいに匹敵すると思うよ。逆に言うと、見ていない民放のために、相当の金額を払っている事に気づくべき。それを考えたら、正々堂々と金額示して徴収しているほうが信用できる」
「面白い番組あるから普通に払う。教育テレビも子どもが見るから。高いけど払うよ。甲子園も見るし。全く見ない人は面倒臭いだろうけど、見る人は払えばいい。高いと思うなら、見ずにそれを証明すればいい。自分は昔見ない時、テレビのチャンネル設定で(NHKのボタンを)省いて、それを徴収員に確認させ、スッキリさせたことがあります」
「NHKは忖度なしで、公平にニュースを流す姿勢を見せないと」
ただ、そんな「NHKマニア」にもNHKに提案と疑問が相次いだ。
「率先して40年近く払っていますが、払わない選択肢も尊重しなければいけないとも思います。見る、見ないと言う議論より、払うだけの価値を受けているかと言うことです。私は受けていると感じますが、そうでない人は沢山いるはずです。そんなに払って欲しいのなら、先ず視聴したくなるような番組作りをしなければならない。『テレビを所有しているなら払ってください』と主張する根拠がなさすぎると思います」
「小さい子どもがいて、NHKのEテレを見ているから、受信料を払うことには個人的に異議はない。民放はどこも似たり寄ったりの質の低いバラエティーが中心で、どうしてもNHK寄りになってしまう。ただ、質が高いのを通り越して、経費削減に取り組んでいる様子が全く見られない。
海外旅行の番組とか、民放で制作するには割に合わないものに費用がかかっているのはいいが、バラエティーのスタジオの背景にやたらと高価そうな花を飾ったり、一面に新鮮な野菜を並べたり、本当にイライラする。割増金制度が出来たのだから、受信料を下げる努力もしろ!」
「ウチは小さな孫がいるのでNHKはかなり見ているし、他にも大人向けのドキュメンタリーなどは民放では真似できないぐらい中身の濃い番組もあって、何の抵抗もなく受信料を支払っています。しかし、見てもいない世帯に無理やり受信料を払わせるのはどうかと思います」
「うちは、テレビCMが嫌いな祖父母や親父がプロ野球中継以外はNHKしか見ない人だったので、子どもの頃から常にNHKが映りっぱなしの家庭だった。誰もいないリビングでNHKが映ったまま、キッチンでテレビの音だけ聴いて料理している祖母の姿もよく見た。
ニュース番組は自然とNHKを見る習慣が染み付いて、今どきの若い人よりは見ているほうだろう。だが、最近の評判を見ていると、NHKは忖度なしで公平にニュース報道やドキュメンタリー番組を流す姿勢を見せないとダメだと思う」
「実家から独立して十数年。ちゃんと受信料払っているが、今までNHKは無駄と思っていた。しかし子供が産まれて、Eテレの『お母さんと一緒』とか、お世話になり始めました。それしか見ていないけど。でも、そんなところで、存在意義を感じたNHKに大丈夫か? と思うところもある。やはりスクランブル化がいいと思うなあ」
(福田和郎)