米地銀が再建策を進めると、米経済が混乱するジレンマ
ファースト・リパブリック・バンク(FRC)のように経営が悪化している米地銀が、再建のために資産リストラを進めれば、さらに米経済に混乱を招くジレンマがある――そう警告するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
野村氏のリポート「再び注目される米国地銀の経営問題:資産リストラの経済・不動産市場への悪影響に注意」(4月27日付)によると、FRCは経営改善のため、500億~1000億ドル相当の大規模な資産売却を模索しているが、そこにはこんな問題点があるという。
「低金利環境下でFRCが提供した住宅ローン債権を売却しようとすれば、金利上昇による住宅市場の悪化の影響から、売却損が生じる可能性もある」
「FRCは、資産の売却に加えて、資産の中身も大きく見直す方向だ。従来は、元本返済を猶予し当面は金利の支払いだけという条件のジャンボモーゲージ(大型の不動産ローン)を顧客に提供してきた。しかし、それは流動性が低い債権であった。FRCは、今後は、流通市場で売却可能なローン債権に軸足を移す方針だという」
「このようなローン債権の売却やリストラは、FRCの経営改善にはつながることが期待できる。しかし多くの地銀が同様な取り組みを行えば、実体経済に悪影響を与えることになるだろう。特に不動産業界には大きな打撃となるだろう」
「米国の商業用不動産向け融資で地銀は3割程度のシェアを持つという。経済の悪化、不動産価格の下落は、地銀の貸出債権の劣化を通じて、銀行の収益を損ね、銀行経営のさらなる逆風となっていくことが予想される」
現在、【図表2】でわかるように、米米中小銀行の預金が急激に流出している。FRCに典型的にみられるように、米中小銀行による経営改善の取り組みが必死に続けられているが、それが、経済、不動産市場の悪化を通じて、新たな銀行不安を引き寄せてしまう可能性があるというのだ。(福田和郎)