大統領選控え、金融不安に公的資金投入できないバイデン政権
こうした事態をエコノミストはどうみているのか。
日本経済新聞オンライン版(4月26日付)「米地銀FRC株下げ止まらず 26日は3割安、支援策難航か」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、
「かなり危うい状況だと、筆者(=上野泰也氏)はみている。イエレン財務長官は公的資金、英語で言えば『タックスペイヤーズマネー(納税者の資金)』を金融不安への対応で投入することに、基本的に消極姿勢である。民間大手銀主導で問題を自律的に解決してほしいというのが、イエレン長官をはじめとする当局者の心中だろう。2024年には大統領選挙が控えており、バイデン政権が金融不安への対応で公的関与を強めることは政治的に不利になり得る」
と、大統領選挙への影響を考慮して米政府が動きにくいと指摘。
「加えて、(ニュース専門放送局の)CNBCが関係者の情報として報じたところによると、ホワイトハウスや米財務省は、懸案となっている米地銀の資産売却計画をとり大統領選挙いまとめるよう他の銀行に圧力をかけることに前向きでないように見えるという」
と、状況の悪化に懸念を示した。
日本経済新聞オンライン版「米地銀FRC、預金4割流出 人員25%削減・再編を模索」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では、BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部副会長の中空麻奈氏が、
「米国には2022年6月末で9624行、商業銀行だけでも4000行超ある。このうち、SVB(シリコンバレーバンク)の影響などをうけて預金が流出したのは何行あるのか。預金金融機関にとって、預金がどのくらいの期間にどのくらい流出すると流動性に疑問符が付くようになるのか。いわゆる風説の流布的な問題がSNSなどで生じた場合の流動性流出をどう防止できるか」
と、SNSの風説の流布といった、これまでの金融危機になかった側面を指摘。そのうえで、
「今般も(FBCが)預金は2022年12月対比で41%減。収入が前年比13.4%減、純利益が同32.9%減。経営状況はいかにも苦しいものの、赤字ではなかった。さらにCET1比率9.32%、不良債権比率は0.02%と財務内容を示す各比率に問題は見えない。悩ましい問題がまだまだ続きそうである」
と、「問題山積み銀行」が表面化しにくい状況を指摘した。