酒類販売のカクヤスグループ(カクヤスG)の株価が2023年4月19日の東京株式市場(スタンダード)で、一時ストップ高水準(制限値幅の上限)となる前日終値比300円(23.0%)高の1603円をつけ、年初来高値を更新した。
終値は202円(15.5%)高の1505円。前日の18日、2023年3月期連結決算の業績予想を上方修正しており、コロナ禍で落ち込んだ飲食店向けの販売が伸びていることなどが好感された。
23年3月期連結決算の業績予想 最終利益は5億5000万円...従来予想より3億5000万円多く
上方修正の内容を確認しておこう。売上高は従来予想比9億円多い1149億円(前期比34.4%増)、営業損益は同3億8000万円多い7億8000万円の黒字(前期は33億2800万円の赤字)、経常損益は同3億7000万円多い7億7000万円の黒字(前期は28億9800万円の赤字)、最終損益は同3億5000万円多い5億5000万円の黒字(前期は28億800万円の赤字)。2月13日時点の従来予想値に比べ、各利益ともに黒字幅が拡大する。
カクヤスGは修正理由として、「コロナウイルス感染症の5類への移行決定等を受け、酒類需要の増加が2、3月の売り上げ伸張につながり、前回予想を上回る見通しとなった」としている。これまで未定としていた期末配当を20円とすることも発表した。中間期と合わせた年間配当は30円で前期から10円増となる。
ちなみにカクヤスGは1921年、東京でカクヤス商店として酒類販売業を創業。首都圏を中心に出店し、ピンクの看板で知られる主力の「なんでも酒やカクヤス」の拠点は2022年3月末で183か所になっている。
主力の「飲食店向け」が好調、前期比65.1%増!
カクヤスGの業績改善の要因は、主力の飲食店向け販売の回復だ。
巣ごもり需要によって家庭向けはコロナ禍でむしろ伸びていたが、その半面、売り上げの過半を占めている飲食店向けが落ち込んだ。
このため、全体としてはコロナ前の2019年3月期に比べて「2桁減収、経常赤字」が2022年3月期まで2期続いた。2023年3月期は3期ぶりに赤字を脱却する見通しだったが、ここへきて黒字幅が拡大する上方修正に至ったというわけだ。
月次売上高をみると、飲食店向けは2023年2月に前年同月比約2倍、3月は54.3%増と伸びている。2023年3月期の通期としては前期比65.1%増だ。
通期でコロナ前の2019年3月期と比較すると、11.9%減。ただ、足元の2023年2月は2019年2月と比べて1.5%減、2023年3月は2019年3月比で2.2%減というところまで回復したことが、今回の上方修正につながった。
一方、家庭向け売上高は2023年2月に前年同月比0.3%減、3月は1.2%減と微減。通期では前期比2.9%減。しかし、2019年3月期と比較した2023年3月期の家庭向けは17.5%増だ。これまで伸ばしてきた水準をある程度維持できれば御の字ということだろう。
こうした業績が投資家に好感され、株価を押し上げている。(ジャーナリスト 済田経夫)