新型コロナウイルス感染症が「下火」になってきたことで、コロナ禍のさまざまな規制が緩和され、海外からの観光客も増えて街には賑やかさが戻ってきた。
2023年3月13日からはマスクの着用が個人の判断に委ねられ、5月8日には感染症の第5類への移行が進められることなども後押しとなっている。
そうしたなか、東京商工リサーチの「2023年 お花見、歓迎会・懇親会に関するアンケート」調査では、今春にお花見、歓迎会・懇親会を「開催した(予定含む)」企業は27.9%と3割を下回り、宴会などはまだ控えめなことがわかった。2023年4月18日の発表。
コロナ禍前の2019年の「お花見、歓迎会・懇親会」の開催率は51.8%で、企業の半数が実施していた。
開催率は大企業34.8%、中小企業26.9% コロナ禍前の水準からはまだ遠く
調査によると、「お花見や歓迎会・懇親会の開催状況」を聞いたところ、お花見や歓迎会、懇親会などの集まりを開いた企業は、コロナ禍の規制緩和が進んだ今春(2023年)は27.9%(4393社中、1229社)だった。
コロナ禍前の2019年は51.8%(4396社中、2279社)だったが、政府のまん延防止等重点措置が発令された2022年は5.3%(4423社中、238社)に急減していた。【図1参照】
コロナ禍前から、お花見などの開催は企業の半数にとどまっていた。そこにコロナ禍で若者の酒席や宴会離れに拍車がかかり、開催率は1ケタ台に激減。コロナ禍も出口が見えかけた2023年だったが、開催率は3割に届かず、コロナ禍前に及ばなかった。
規模別では、大企業の開催率は34.8%(556社中、194社)で、2022年の開催率の4.4%(561社中、25社)から30.4ポイント回復したが、コロナ禍前の63.3%(557社中、353社)を28.5ポイント下回った。
また、中小企業は開催率が26.9%(3837社中、1035社)で、前年の5.5%(3862社中、213社)から21.4ポイント改善したが、コロナ禍前の50.1%(3839社中、1926社)からは23.2ポイント下回った。
都道府県別の動向は? 開催率トップは、秋田県
お花見や歓迎会・懇親会の開催状況を都道府県別でみると、2023年の開催率(「開催した〈予定含む〉」の割合)のトップは、秋田県の46.5%。コロナ禍前の2019年(60.4%)より13.9ポイント少なく、前年の2022年(11.6%)からは34.9ポイントも増えた。
次いで、熊本県の42.8%(コロナ禍前60.7%、前年3.5%)、鹿児島県は41.9%(同58.0%、同9.6%)、佐賀県40.0%(同50.0%、同0.0%)、岡山県39.0%(同53.8%、同7.6%)と続いた。開催率が4割以上は東北1県、九州3県の4県だった。
コロナ禍前の開催率で40%以上は43都道府県だったのに対して、今年は秋田県のほか、熊本県(42.8%)や鹿児島県(41.9%)、佐賀県(40.0%)の九州3県を加えた4県にとどまった。
一方、開催率の最も低かったのは栃木県の12.9%。コロナ禍前が48.4%、前年は4.6%だった。次いで、奈良県の15.6%(コロナ禍前39.3%、前年3.1%)、徳島県の15.7%(同36.8%、同5.2%)、静岡県の17.0%(同42.6%、同3.6%)、山梨県の17.2%(同48.2%、同3.4%)となった。
もともと開催率が低い都道府県が並ぶが、開催率が3割を下回ったのは30都府県で、1割台は9県だった。
青森県の開催率、コロナ禍前の水準近くに回復
コロナ禍前の2019年の開催率に最も近い水準に回復したのは青森県。
コロナ禍前の37.8%に対し、前年は8.1%、今年31.4%だった。今年はコロナ禍前との差が6.4ポイントまで縮小した。
鳥取県はコロナ禍前の開催率が70.3%で、当時は唯一の7割台で全国トップだった。だが、今年は34.6%とコロナ禍前を35.7ポイント下回って10位にとどまり、コロナ禍前からの回復度合いはワースト4位。
回復度合いのワーストは、福島県でコロナ禍前の60.3%に対して今年は20.6%にとどまり、39.7ポイントの大幅な低下となった。
開催率を大都市圏でみると、東京都が28.3%(コロナ禍前51.5%、前年5.9%)、大阪府が28.1%(同51.9%、同5.9%)、神奈川県が22.8%(同51.5%、同2.6%)、愛知県が25.3%(同52.4%、同4.4%)、福岡県が29.7%(同58.2%、同5.0%)と、いずれも30%に届かず、慎重な姿勢がうかがえる。
前年の全国の開催率は5.3%にとどまったが、2023年は栃木県(8.2ポイント改善)を除く46都道府県で10ポイント以上改善した。ただ、コロナ前の水準を大幅に下回る都道府県がほとんどだった。
企業が主催する宴会の需要は、コロナ禍で定着した「三密回避」を背景に、今後も伸び悩む可能性が高い。このため、飲食店は個人客や小規模な宴会需要の開拓へ転換が必要かもしれない。
お花見や歓迎会を開催した企業は「制限は設けていない」
さらに「今年開催した(予定含む)」と答えた企業(1206社)に、「『歓迎会・懇親会』について、現在制限を設けていますか?」(複数回答)と聞いたところ、開催した企業の78.9%(952社)が開催に伴う「制限は設けていない」と答え、制限のない宴会形式に戻っていた。
次いで、「二次会の開催を制限している」と答えた企業は11.8%(143社)、「参加人数に上限を設けている」が11.2%(136社)、「滞在時間に上限を設けている」は5.3%(65社)となった。【図2参照】
東京商工リサーチが22年12月に実施した「忘・新年会に関するアンケート」調査と比べると、滞在時間や参加人数などへの制限が緩和された傾向にあった。
「制限は設けていない」は年末年始の忘年会や新年会と比べて45.5ポイント上昇。新規感染者数の激減と感染症対策の浸透が、制限緩和の背景にあるとみられる。
なお、調査は、2023年4月3日~11日にインターネットで実施。有効回答4423社を集計、分析した。また、資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。