「日本人は合理性を憎んでいる。だからこそ、合理的に生きることが成功法則になる」
そのうえで、最強の資産運用は人的資本の活用である、と強くアピールしている。
人的資本の成功法則として重要なのは、「自分がもつアドバンテージをどのようにマネタイズするかだ」としている。「ゆっくり成功すればいい」というアドバイスが参考になる。大事なのは、「若くして成功する」ことではなく、「人生の最後に成功する」ことだからだ。
社会資本の成功法則について、「あなたは友だち5人の平均である」というネットワーク科学の常識を示したうえで、「最高のチーム」に参加したときに出会うのは、「友だち」ではなく、大きな人的資本と高い評判をもつ「仲間」だ、としている。
最後に、人生の優先順位を決め、それ以外のものをミニマリズムの手法で徹底的に合理化すれば、その分だけ大事なことに多くの資源を投入できる。
そのとき「成功」にとって重要なのは、「自分にはこれしかない」と結論を決めることなく、トライ・アンド・エラーを繰り返すことだ、という。
「日本人は合理性を憎んでいる。だからこそ、合理的に生きることが成功法則になる」という言葉に、納得した。
ほかにも、多くの科学者の知見をもとに自論を展開しているところも読みどころだ。「不都合な事実」から目をそらすことなく、徹底的に考える著者のスタンスは信頼できる、と思った。
「どれほど合理的に人生を設計しても、それでも不合理なことはしばしば起こる。それが人生だし、だからこそ面白いのだろう」という結びも、実に人間らしい。(渡辺淳悦)
「シンプルで合理的な人生設計」
橘玲著
ダイヤモンド社
1760円(税込)