バブル以来、日本株が抱えてきた「2」と「10」の壁とは
東証が主導する企業改革が、日本株が抱えてきた「ジンクス」を打ち破るかもしれないと期待を込めるのは、野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト石黒英之氏だ。
石黒氏はリポート「日本株は『2』と『10』の壁を越えられるか?」(4月17日付)のなかで、日本株に立ちはだかる「2」と「10」の壁について、こう述べる。
「日本株は近年、『2』と『10』の壁が立ちはだかってきました。『2』の壁は日本株が米国株の年間パフォーマンスを上回る連続記録がバブル崩壊以降、『2年』で止まるというジンクスです。『10』は日本株のROE(自己資本利益率=稼ぐ力を示す指標)が『10%』を越えられない状態が長期化していることを意味します」
「米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が『日本株への追加投資を検討したい』と表明するなど、日本株を見直す動きが一部で高まりつつあります。仮に2年連続で日本株が米国株をアウトパフォームすることになれば、21世紀以降では小泉政権下で構造改革期待が高まった2004~05年、安倍政権が打ち出したアベノミクスへの期待が高まった2012~13年以来のこととなります」
では、日本株が「2」のジンクスを乗り越えるにはどうしたらよいか。
石黒氏は、先進国株に比べて、TOPIXの実績ROE(自己資本利益率)がどうしても「10%」の壁を越えられないグラフ【図表2】を示しながら、こう指摘した。
「日本株が『2』の壁を乗り越えるためには、やはり日本企業の収益力向上が不可欠と考えられます。日本株は先進国株と比べROEが低く、こうした稼ぐ力の弱さが、日本株の評価が高まらない要因の1つと考えられます【図表2】。ただ、長年日本株の課題であったROE向上を促すような取り組みが東京証券取引所主導で動き出したことは明るい材料です」
「東証は3月31日、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る上場企業などに、資本コストや株価を意識した経営の実現を要請しました。今後日本企業の間で、増配や自社株買いの強化、設備投資などを通じ、ROEやPBRの向上を図る動きが広がりそうです。日本株が2つの『壁』を乗り越える取り組みがついに始動しました」