植田総裁、内田副総裁の会見の行間を深読みすると、真意が...
一方、「植田日銀」は初手から動く可能性があるとみるのは、明治安田総合研究所フェロー・チ-フエコノミストの小玉祐一氏だ。
小玉氏はリポート「植田日銀の初動に注目~4月会合で動く可能性は残る」(4月18日付)のなかで、就任記者会見での植田総裁と、政策実行担当者である内田副総裁の発言内容を一字一句詳細に分析、隠された意図を探っている。
それは、「YCCの修正は、債券市場への投機攻撃を避ける必要上、事前に示唆するのは難しく、たとえ早期の変更が念頭にあったとしても、これ以上の踏み込みは難しかった」からだ。そこで、会見内容を深読みすると――。
植田総裁のYCCに対する発言:「現状の経済・物価・金融情勢にかんがみると、現行のYCCを継続するということが適当」と、改めてYCCを継続する姿勢を示した。一方で、「本当に安定的・持続的に2%に達する情勢かどうかというのを見極めて、適切なタイミングで正常化に行くのであれば、行かないといけないですし、それはなかなか難しいということであれば、副作用に配慮しつつ、より持続的な金融緩和の枠組みが何かということを探っていく」と、将来的な修正作業には含みを残した。
内田副総裁の発言:「今、日本銀行が直面している課題は、いかに工夫を凝らして、効果的に金融緩和を継続していくかということ」と、「工夫を凝らす」余地があることを認めた。
こうした発言の「真意」から小玉氏はこう指摘する。
「個人的には、4月最初の金融政策決定会合で動いても驚かない。YCCのスキームの弱点がすでに明確になっている以上、問題を先送りしてもいいことはないように思える」
「植田総裁の就任会見を素直に読む限り、4月の初回会合は無風と見るのが自然だが、10年国債利回りの変動許容幅の再拡大などの修正に踏み切る可能性も半分程度は残っているとみておきたい。
その際、すでに形骸化している0%の目標も取っていい。市場も、ターゲットの水準自体はもはや意識していない。レンジさえ残れば、YCCは続いているとの説明は可能である。操作目標とする年限の短期化も依然として候補である」
また、小玉氏は植田総裁の「誠実な対話能力」に期待を示した。
黒田東彦前総裁が、記者会見でも記者からの鋭い質問に正面から答えないケースが増え、ついに記者会見が形骸化してしまったと指摘する。
「植田総裁はもともと弁舌の徒というタイプではないが、国会の所信聴取も、就任会見の説明もわかりやすく、誠実に答えようとする姿勢も印象的だった。また、経済学者として経済や金融政策の理論に造詣が深いのはもちろん、日銀審議委員を7年の長きにわたって務め、日銀の実務や内情も熟知している」
「白川方明(まさあき)元総裁の会見が、しばしば『白川ゼミ』と称されたように、植田総裁の会見も毎回啓発的な会見になることが期待できそうである」