岸田政権の物価抑制策も効果ナシ? 市場予想上回る「消費者物価」上昇! エコノミストが指摘「インフレの7割は食品値上げラッシュ」「今後、もっと上がる」

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   物価上昇に歯止めがかからない。

   2023年4月21日に総務省が発表した2022年度の平均の消費者物価指数(CPI)は、前年度に比べ3.0%上がった。第2次石油ショック後インフレが続いていた1981年度以来、41年ぶりの歴史的な高水準だ。

   また、同時に発表された3月CPIも、生鮮食品とエネルギーを除いた指数(コアコア総合指数)が前年同月より3.8%上昇した。これも1981年以来、41年ぶりの高水準で、12か月連続で前月より上昇幅が拡大した。

   いったい日本経済はどうなるのか。エコノミストの分析を読み解くと――。

  • どうなる日本経済?(写真はイメージ)
    どうなる日本経済?(写真はイメージ)
  • どうなる日本経済?(写真はイメージ)

「鈍化を想定」の市場予想を吹き飛ばす「食品値上ラッシュ」

   総務省の発表資料などによると、3月CPIは、生鮮食品を除く総合指数(コア指数)は前年同月比プラス3.1%と、2月と同水準となった。これは、鈍化傾向を想定していた市場予想をやや上回る上昇率だ。

   政府の電気代、ガス代の抑制政策の影響で、コア指数は1月の前年同月比プラス4.2%から2月には同プラス3.1%と大きく低下した。しかし、3月も同水準となったことで、基調物価上昇率が明確に鈍化し始めたとは言えない状況になった。

   政策効果の影響を受けて、エネルギー価格はCPI全体を同0.3%押し下げるマイナス要因へと転じたのに、食料品の大幅な値上げが3月も続いた。

   そのため、生鮮食品を除く食料品は同プラス8.2%で、CPI全体を1.8%も押し上げた。特に、価格高騰が際立つ鶏卵は、3月は同プラス29.4%とほぼ3割の上昇となった。

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物価上昇が続く日本の首都・東京

   今回の結果をエコノミストはどう見ているのか。

   日本経済新聞オンライン版(4月21日付)「消費者物価、3月3.1%上昇 電気代抑制も高水準続く」という記事につくThink欄の「ひと口解説コーナー」では、慶應義塾大学総合政策学部の白井さゆり教授(マクロ経済学)は、

「2月に引き続き食料価格の高騰が主因で、3月のインフレ率3.2%の6割以上を占めています。とくに生鮮食品以外の食料価格の高騰が激しく、インフレ率は2月の7.8%から3月には8.2%に上昇しており、まだ昨年来の原材料価格の転嫁が続いています。また外食関連の価格上昇ペースも加速しており、2月の7.2%から3月には7.6%へ上昇しています」

   と指摘。そのうえで、

「つまり、食品関連だけでインフレの7割を説明できており、あきらかに(需要の拡大ではなく)外的要因による物価上昇です。食料の実質消費は2020年のコロナ感染症の頃から低下していますが、その後は食料価格の高騰が市民の節約志向を招いているようです」

   と、深刻な食料価格の上昇に懸念を示した。

トラック運転手の「2024年問題」、さらなる物価上昇のリスクに

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スーパーの高い食品に悩む女性(写真はイメージ)

   同欄では、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏も、

「生鮮食品除くコアの伸び率は横ばいでしたが、エネルギーも除くコアコアで伸びが高まりました。背景には、40年ぶりの世界的インフレにより、日本企業も値上げを余儀なくされたことで、デフレで失われた企業の価格転嫁メカニズムに復活の兆しが出てきている印象です」

   と分析。白井教授と同様に、

「特に食品値上げ圧力が強く、4月に政府小麦売り渡し価格も上がりましたから、値上げは持続するでしょう。なお、次回の4月分は年度が替わり、多くの企業で価格改定が行われますので、強めの数字が出てくる可能性があると思います」

   と、さらなる物価上昇を予想した。

   同欄では、日本経済新聞社編集委員の志田富雄記者が、別の角度から、懸念を示した。物流問題だ。

「食品メーカーは今後の価格上昇要因としてトラック運転手の残業規制が強化される2024年問題(物流コストの増大)や、賃金を引き上げないと工場労働者の確保が難しくなっていることを挙げます。国内にも値上げの要因はあります。加えて、電力料金がさらに引き上げられれば、それも大きな価格上昇圧力になります。値上げのペースが鈍っても上昇傾向が長期化する可能性はあります」
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物流問題も今後の物価上昇の大きなリスクだ(写真はイメージ)

   一方、ヤフーニュースのコメント欄では、三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員の小林真一郎氏が、

「3月の生鮮食品を除く総合では2月と同じ前年比3.1%上昇と、伸び率の拡大に歯止めがかかった形ですが、政府の物価高対策の効果で約1.0%押し下げられており、コアコア指数では、2月の前年比3.5%上昇から同3.8%と上昇圧力はむしろ高まっています」

   と説明。つづけて、

「なお、2022年度全体では、前年度比3.0%上昇と1981年度の同4.0%上昇以来の高さです。
内容をみると、政策効果等で電気代を中心にエネルギーが前年比3.8%低下と2か月連続でマイナスとなる一方、鶏卵、食用油、ハンバーガーなどを中心に『生鮮食品を除く食料』の上昇ペースが前年比8.2%と高いほか、円安の影響もあり、家庭用耐久財などでも上昇圧力が高まっています。資源価格のピークアウト、円安一服などの一方で、新年度入りのタイミングでサービス価格が上昇する可能性もあり、物価は当面、高い伸びを続けそうです」

   と、こちらも当分、物価上昇が続くとした。

値上げ批判の声も減り、企業の価格転嫁「意欲」が予想以上に強い

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多くの食品が値上がりしている(写真はイメージ)

   第一生命経済研究所のシニアエグゼクティブエコノミスト新家義貴氏も、生鮮食品及びエネルギーを除く「コアコア総合指数」の予想を上回る伸びに注目した。

   新家氏はリポート「消費者物価指数(全国・23年3月)~コアコアの加速が止まらない~」(4月21日付)のなかで、3月の消費者物価指数(生鮮食品除く)が前年比プラス3.1%と、前月(2月)から上昇率は変わらなかったのに、コアコアが前年同月比プラス3.8%と、前月のプラス3.5%から0.3%も上昇率を拡大させたと説明【図表】。

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(図表)全国・消費者物価コア(前年比)(第一生命経済研究所の作成)
「3月も食品価格の大幅値上げが続いたほか、食料やエネルギー以外の部分でも価格転嫁の動きが強まっていることが押し上げ要因になっている」
「本日のコアコアの強さにもみられるとおり、企業の価格転嫁意欲は予想以上に強い。過去の円安等によるコスト上昇の未転嫁分が残っていることに加え、電気代やガス代の上昇、人件費負担の増加等が値上げの理由として挙げられるようになっており、しばらくは積極的な価格転嫁が実施される可能性が高いだろう。値上げに対する批判の声がかつてと比べて小さくなっている分、価格引き上げを行いやすいという面もある」

   物価上昇圧力は想定以上だと指摘している。(福田和郎)

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