「ああ、仕事にやりがいがある! 毎日会社に行くのが楽しい! 本当にこの会社に入ってよかった~!」と、心の底から思える企業で働けるのは幸せだ。特に、コロナ禍で苦難の就職活動を行なった新人にとっては――。
就職・転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク(東京都渋谷区)が2023年4月19日、「コロナ時代の新入社員が選ぶ『働きがいのある企業ランキング』」を発表した。
多様な価値観を持つZ世代の新人がコロナ禍で行き着いた、仕事に生きがいを見いだせる「魂の企業」には、どんな魅力や風土があるのか。
コンサル、IT、広告代理店、人材サービス&「ユニクロ」系が3社
OpenWorkは、社会人の会員ユーザーが自分の勤め先の企業や官公庁など職場の情報を投稿する国内最大規模のクチコミサイト。会員数は約550万人(2023年3月時点)という。
OpenWorkでは、企業の評価を「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」の8つの指標を5段階で評価している。
今回のランキングは、コロナ時代の新入社員による、こうした8つの指標を合わせた「総合評価」スコアの高さで集計した。コロナ禍で就職活動を行なった2020年、2021年入社の新人のクチコミに限定して分析している。
その結果、1位に米国に本拠を置く世界最大の一般消費財メーカーのP&Gジャパン、2位に米国のクラウド・コンピューティング・サービスのセールスフォース・ジャパン、3位に米国に本拠を置く世界最大規模の会計事務所デロイト トーマツ コンサルティング、4位に日本の総合商社三井物産、5位に日本のコンサルタント企業ベイカレント・コンサルティングが選ばれた【図表】。
さらに、6位に日本のコンサルタント企業アビームコンサルティング、7位に日本の総合人材サービスのクイック、8位に日本の総合人材サービスのレバレジーズ、9位に日本のITコンサルティングファームのフューチャーアークテクト、10位に日本のインターネットメディア・広告のサイバーエージェントが選ばれた【再び図表】。
上位10社中、トップ3を米国企業が独占しているが、残り7社はすべて日系企業。10社中、4社がコンサルタント企業だ。全体を見渡しても、上位30社中7社がコンサルティング系企業で、業界の比率としては一番高い。
しかし、ほかにIT・インターネット・広告代理店といった情報産業系企業や、人材サービス系など多種多様な業界業種の企業が並んだのが特徴だ。そんな中でも製造小売であるファーストリテイリングや、その傘下であるユニクロ、ジーユーの3社がランクインしたことが目立つ。
Z世代新人のキーワードは、「成長」と「社会貢献」
ランクイン企業の新卒入社者が投稿した「入社理由」からは、「若手のうちから成長できる」「裁量権が大きい」といった声が業界業種問わず多く見られた。転職を前提にしていることがうかがえる。
その一方で、「課外活動や社会貢献ができる」という声もあり、Z世代の若者は、「成長」と「社会貢献」に大きな魅力を感じているようだ。クチコミをみると――。
P&Gジャパン「ファーストキャリアとしては申し分ないので入社を決めた。普通の会社では一生かけても1人では受け持つことのない責任範囲と仕事量を1年目からできるので、間違いなく成長できる」(営業、男性)
デロイト トーマツ コンサルティング「入社を決めた理由は、自身の市場価値をあげるため。また、経営者視点をもってさまざまな経営者と議論ができたらと思ったため」(コンサルタント、男性)
サイバーエージェント「入社理由は、成長産業で成長し続けている会社であること、インターネット広告マーケットで市場1位であり、マーケットトップの営業&コンサルタントと仕事ができること、若手でも相当大規模の挑戦をさせてくれ、失敗してもまた次のチャンスをくれる風土があること」(広告営業、男性)
セールスフォース・ジャパン「会社が掲げている理念に働いている社員が共感し、行動につなげていると感じたため入社。また、ボランティア活動も推奨されており、自分がボランティアを続けながら業務も両立したいと考えていたため」(インサイドセールス、女性)
大同生命保険「社会に貢献できると感じたから。税理士と仕事をすることで、金融・税務の知識や考え方が身につくと思った」(代理店営業、男性)
セールスフォース・ジャパン「一人で勝つな、一人で負けるな」
さて、ランクインした企業を各評価スコア別で見てみると、上位ランクイン企業は「社員の士気」「風通しの良さ」「20代成長環境」の3つのスコアが押し並べて高い傾向にある【再び図表】。
新入社員はファーストキャリアで成長環境を求める傾向にあるため、「20代成長環境」のスコアが高い企業ほど、総合評価が高い傾向にあるのは当然といえる。だが、その一方で、「社員の士気」と「風通しの良さ」の指標もZ世代は重視している。
仕事に対するモチベーションがあがるし、ポストコロナ時代では、多様な働き方がかない、さまざまな価値観もつ人々と尊重し合うことが一層求められるからだ。
個社別にみると、1つの指標に特化し高い評価を得ている企業があった。たとば、ヤフーは全体評価では25位だが、「風通しの良さ」だけで見ると10位となり、特徴が浮かび上がる。また、ファーストリテイリング(21位)、ユニクロ(26位)、ジーユー(27位)は「人事評価の適正感」「待遇面の満足度」のスコアが特に高い特徴があった。そんな「個性的な企業」のクチコミをみると――。
セールスフォース・ジャパン「『一人で勝つな、一人で負けるな』という言葉が浸透しており、普段は関わったことのない社員でも相談事などは親身に乗ってくれる。ナレッジ(知識・知見)をシェアする文化もあり、部門ミーティングではトップパフォーマーのナレッジシェアの時間が確保されている」(インサイドセールス、女性)
デロイト トーマツ コンサルティング「同業他社と比較すると、若手の能力が伸びやすいように感じている。風通しも良く、業務の上での意見を積極的に述べやすい」(コンサルタント、女性)
三井物産「盤石な収益基盤を持った上で、新規事業開発に挑戦できること。挑戦がよしとされ、かつ労働環境が整備されており、ビジネスを学ぶ場としては最高と思う」(営業、男性)
ベイカレント・コンサルティング「成果を出せば評価され、次年度の給与に反映されるため、成果を出すことや自分自身のスキルを伸ばすことへの意識が高い社員が多い」(コンサルタント、男性)
クイック「出る杭を伸ばす、オープンでフランクな風土など、考えに一貫性がある会社。採用のタイミングから常に理念浸透を謳っているため、それに共感した社員が入社をしており、社員が同じ方向を向いて仕事を行なっている」(コンサルタント、男性)
ヤフー「非常に風通しのよい職場です。1チームが5~10人程度で構成されるが、チーム内での人間関係のマンネリ化を防ぐ狙いで、プロジェクトごとに複数チームが協力して開発を行っています」(エンジニア、男性)
ファーストリテイリング「自分で決めた目標に対して半期ごとに取り組み、実際にボーナスなどで評価されるので非常にやりがいがある」(店長、女性)
このような「生の声」を見ていくと、「若手にどんどん冒険をさせる」「成功すれば互いに褒め合い、かつ正当に評価する」といった、躍動感あふれる企業の「魂」と「文化」が、新入社員たちに働きがいとやる気を生み出しているようだ。
調査は、OpenWorkに投稿された会社評価レポートのうち、2020年以降に入社した新卒社員による2万1093件を「コロナ時代の新卒社員」として集計、分析した。ただし、2022年の新卒入社者は、データ集計時点でOpenWorkの投稿条件である「就業経験1年以上」を満たさないため対象外とした。(福田和郎)