値下げの動きが落ち着きを見せていた携帯電話業界で、再び競争が激化しそうだ。
これまでNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社だけに割り当てられていた「つながりやすい電波」プラチナバンドが、年内にも楽天モバイルに割り当てられる可能性が出てきたからだ。
「価格の安さ」で大手3社体制に斬り込んだ楽天モバイルだったが、最大の弱点が「通信のつながりにくさ」だった。悲願だったプラチナバンド獲得の目途がたったことで、ネット上では、「頑張れ、楽天モバイル!」という期待の声が高まっている。
「プラチナバンド」割り当ての裏に、総務省の狙い...「もっと競争を」
「プラチナバンド」とは、700~900メガヘルツの周波数帯の電波で、障害物に対する透過性が高いうえに、ビルなどを回り込んで届くので、建物内や地下でもつながりやすいのが大きな特長だ。ただし周波数帯が狭く、しかも空きが少ないため希少価値が高いことから「プラチナ」と呼ばれるようになった。
報道をまとめると、総務省は2023年4月18日、「プラチナバンド」のうち未利用となっている一部の帯域を使う案をまとめ、今年秋をめどに希望する携帯会社に対して、新たに割り当てる方針を発表した。
「プラチナバンド」については、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクには割り当てがあるが、2020年4月に本格参入した楽天モバイルには割り当てがない。
そこで、総務省の有識者会議「情報通信審議会」が2020年11月から、他3社が使っている周波数の再割り当てをできないか検討を進め、その仕組みが必要との提言を2021年にまとめた。
総務省には、楽天モバイルにも割り当てたいという意図があるようで、朝日新聞(4月19日付)は、「迅速な動きの背景には、携帯大手の競争がまだ不十分という総務省の問題意識が透けて見える」と伝えている。
翌4月19日、総務省の「割り当て希望社募集」の呼びかけに、「早期に希望する」と応じたのは、楽天モバイル1社だけだった。大手3社は希望の有無を示さず、「今後判断する」という内容にとどめた。
楽天モバイルは4月19日付のプレスリリースで「声明」を発表、その中でこう述べている。
「当社は、参入当初より『携帯市場の民主化』を掲げています。国内における公平な競争環境ならびに通信ネットワークの構築・整備のため、つながりやすいモバイル通信サービスを実現するうえで欠かせない周波数であるプラチナバンドを(中略)割り当てていただいた場合には、当社のネットワーク技術および既存の当社基地局サイトを活用し、柔軟かつコストを抑えた効率的な基地局設置を行い、お客様に安定的かつ高品質なサービスを提供していきたいと考えております」
大手3社への「挑戦」を宣言したに等しいだろう。
ただし、今回割り当ての対象となるとみられる「プラチナバンド」の一部は、周波数帯で隣り合う地上デジタルテレビ放送などへの干渉を防ぐ目的で、「空白」の帯域としているものだ。【図表】の太い赤線で囲った部分(2か所)がそれで、大手3社の帯域に比べるとかなり狭いことがわかる。
収容できる契約者数は、約1000万件規模とみられる。それでも、契約者数が昨年末時点で455万件の楽天モバイルには魅力的だろう。