巨額のリベンジ消費に暗雲、不動産不況と失業率
中国経済が今後、本当に回復するかどうかは、日本の国家予算の1.6倍にも達する巨額な「過剰貯蓄」が消費に回るかどうかだ、と指摘するのは三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部研究員の丸山健太氏だ。
丸山氏のリポート「中国の『過剰貯蓄』~消費に回るかはマインドの改善次第(4月18日付)によると、コロナ禍によって消費が控えられ、家計の貯金に回った「過剰貯蓄」は2020年から2022年にかけて合計9.3兆元(約177兆円)にのぼる【図表2】。
これは、日本の国家予算(2023年度一般会計約114兆円)の約1.6倍に匹敵する。また、2022年の中国GDPの7.6%に相当する、ケタ外れの巨額だ。この「過剰貯蓄」がリベンジ消費の追い風となれば、中国経済の回復につながるのだが――。
丸山氏は、2つの理由でリベンジ消費に回るのは難しい可能性があるという。
1つは、「過剰貯蓄」のうち6.8兆元(約129兆円)は不動産投資手控えによるもので、不動産不況が改善すれば、そちらに回ってしまう。したがって、残りのリベンジ消費になり得る原資は2.5兆元(GDPの2.0%、約48兆円)だ。しかし、こちらも足元で人々が貯蓄を切り崩すことを躊躇する懸念が待っている。
もう1つは、大都市で拡大する深刻な失業率だ。【図表3】は都市部の若年層(16歳~24歳)と、中堅層(25歳~59歳)の失業率の推移だ。これを見ると、若年層では失業者が20%近くに達していることがわかる。
「2022年の若年層失業率の悪化は、ゼロコロナ政策などによる中国景気減速に加え、大学新卒者が初めて1000万人を超え、大量の新規就労者が労働市場に流入し、労働需給のバランスが崩れたことも大きく影響した。23年は、ゼロコロナ政策撤廃で景気回復に転じるとみられるが、大学新卒者は1158万人と過去最多となる見込みであり、労働の供給過剰による失業率の高止まりは今後も続くとみられる」
「雇用環境の悪化が長期化すれば、消費者マインドの回復も遅れ、リベンジ消費の規模は計算上の過剰貯蓄額2.5兆元を下回る公算が大きい」
中国政府は、一定の雇用を創出した企業に補助金を支給するなどの対策をとるとみられている。だが、「過剰貯蓄」2.5兆元のリベンジ消費を実現し、GDPを2.0%押し上げられるかどうかは、人々の先行き不透明感をいかに払拭できるかにかかっている。(福田和郎)