市場予想上回るGDP4.5%増、「中国経済回復」は本物? エコノミストが指摘「実感から離れた統計数字に違和感」「若者失業率高止まりが消費の足かせに」

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ハイテク関連産業を取り巻く状況が、厳しさを増す

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ハイテク産業が集まる深センの夜景

   今回の中国GDPの結果をエコノミストはどうみたか。

   まず、統計の数字そのものに「違和感を禁じ得ない」として、疑問を呈したのが第一生命経済研究所主席エコノミストの西濵徹氏だ。

   西濵氏のリポート「中国、2023年成長率目標は『遡及改定』に伴い実現のハードル低下~足下はスタートダッシュを切るも、依然その持続力には疑問が残る上、国内外に不透明要因は山積~」(4月18日付)によると、今回のGDP発表の際、過去にさかのぼる数値改定が行われた【図表1】。西濵氏はこう疑問を投げかけた。

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(図表1)実質GDPと成長率の推移(第一生命経済研究所の作成)
「昨年(2022年)前半については、感染拡大により上海市など多くの都市で事実上のロックダウン(都市封鎖)が行われるなど幅広い経済活動に悪影響が出たにもかかわらず、改訂された季節調整値に基づけば、家計消費はほぼ影響を受けていないこととされているうえ、昨年末にかけての混乱に際してもほぼ下振れしていないこととなっている。こうした動きは、上述のGDP統計の改定値同様に実感とかなりかけ離れたものとなるなど違和感を禁じ得ない」

   それはともかく、消費活動が活発化し始めている点は評価した。

「経済活動の正常化の進展を反映して外食関連(前年比プラス26.3%)や宝飾品(同プラス37.4%)など高額品に対する需要が活発化している動きがみられる。(中略)富裕層や中間層などを中心に消費活動が活発化している様子がうかがえる」
「3月は『国際女性デー』に併せて同国では婦女節として大手EC(電子商取引)サイトで、化粧品をはじめとするコスメ用品を対象とする大規模セールのほか、『ライブコマースセレモニー』と称する大規模セールが実施されており、化粧品(前年比プラス9.6%)や日用品(同プラス7.7%)などの需要が押し上げられたとみられる」
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経済の中心地・上海の高層ビル群

   ただし、製造業では米中摩擦の激化の影響を受けた分野で低迷がみられた。

「素材・部材などの供給懸念を反映して、マイコン(前年比マイナス21.6%)や集積回路(同マイナス3.0%)、産業用ロボット(同マイナス5.7%)、スマートフォン(同マイナス6.7%)などの生産は軒並み弱含んでおり、ハイテク関連産業を取り巻く状況は厳しさを増していると捉えられる」

   また、企業も国有企業は好調だが、民間企業は低迷と、バラツキが目立った。

「国有企業(前年比プラス4.4%)や株式会社(同プラス4.4%)などの生産活動は堅調な動きがうかがえるものの、民間企業(同プラス2.0%)や外資系企業(同プラス1.4%)の生産は、対照的に力強さを欠く動きをみせており、足下の景気回復の動きは公的部門を中心に進んでいる様子がうかがえる。」

   そして、今後の見通しをこう結んでいる。

「世界経済の減速懸念もくすぶるとともに、国際金融市場にも不透明感がくすぶるなか、先行きの中国景気を取り巻く状況には引き続き見通しが立ちにくい状況にある」
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