国連も指摘、日本の他者への「寛容性」の低さが不幸の一因
もう1つ、日本の「働く幸せ実感」を下げている重要な要因は、日本の就業者の「寛容性」の欠如だ。
昨年11月の調査では、日本は香港に次いで、「自分とは考え方や好み、やり方が違う人と積極的に関わりたくない」といった非寛容的な回答が多く、「寛容性」が18か国・地域の中で香港に次いで2番目に低かった。このため、「働く幸せ実感」と「寛容性」の相関を示すグラフでも、香港と日本が突出して「幸福感」が低いことがわかる【図表4】。
つまり、自分とタイプが違う同僚を認めることができない人が多いということだ。これでは、職場内がギスギスするばかりで、相互尊重の組織文化は育ちにくくなり、お互いに幸せになることは難しいだろう。
今回の調査結果について、パーソル総合研究所主任研究員の井上亮太郎氏はこうコメントしている。
「組織文化や雇用慣行について分析すると、日本は『上層部の決定にはとりあえず従うという雰囲気がある』『社内では波風を立てない事が何よりも重要とされる』などの文化的特徴が強く、日本の就業者の働く幸せ実感が低い主な要因であることが示唆された」
「とりわけ職位の低い若手層の働く幸せ実感が低く、不幸せ実感が高い。日本の就業者は『所属組織に自分を捧げる』ことを調査国・地域中最も重視しない(帰属意識が低い)傾向とも整合すると考える」
「就業者の寛容性が高い国・地域ほど、職場の相互尊重の組織文化が強く、働く幸せ実感が高く、不幸せ実感が低い。国連の世界幸福度報告『World Happiness Report 2022』では、日本の人生における幸福感が低い一因として『他者への寛容性』の低さが指摘されているが、本調査から働くWell-beingにおいても同様の傾向が確認された」
「DI&E(個々の違いを受け入れ、認め合い、生かしていく)の観点からも、組織や社会において、異なる意見や背景、特性を持つ個人やグループを受け入れ、尊重することが働く幸せ実感やワーク・エンゲージメントの向上、さらには、組織のパフォーマンスやイノベーションにも寄与すると考える」
(福田和郎)