金融資産への影響 60歳代で500万円以上の差
また、代表的な資産形成行動の一つである株式や投資信託などのリスク資産の保有についてみると、回答者全体における保有者の割合は21.3%で、金融教育の受講経験が「ある」人では25.6%、「ない」人では19.6%だった。
さらにNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった優遇制度の利用者は、回答者全体で39.6%。このうち11.3%の人が二つ以上の制度を利用している。 個々の優遇制度をみると、利用者が多い順に「NISA」が19.5%、「つみたてNISA」が14.2%、「iDeCo」は9.6%、「企業型DC」が9.5%だった。
金融教育の受講経験でみると、受講経験が「ある」人は46.0%(うち、複数制度の利用者の割合は13.7%)、受講経験が「ない」人の利用者は36.9%(うち、複数制度の利用者の割合は10.3%)で、受講経験の有無による差は9.1ポイントだった。金融教育の受講経験が「ある」人のほうが積極的であることがわかる。
調査で、「金融教育の受講経験の有無や受講した時期が資産形成にどのように影響しているのか」を分析したところ、資産形成の結果である「金融資産保有額」をみると、20歳代の平均保有額は受講経験が「ある」人で314万円、「ない」人で409万円と、その差は95万円だった。
しかし、それが60歳代になると、受講経験が「ある」人で2234万円、「ない」人では1717万円とその差額は516万円と、500万円を超える差が生じたことがわかった。【図3参照】
金融資産の平均保有額は、回答者全体で931.3万円。これを金融教育の受講経験の有無でみると、金融教育の受講経験が「ある」人は、金融資産の平均保有額は1001.4万円。一方で、受講経験が「ない」人の平均保有額は901.0万円だった。
また、60歳代で金融資産の保有額が「2000万円以上」の人の割合は、受講経験が「ある」人で39.4%、「ない」人では29.4%と、その差は10ポイントもあった。【図4参照】
20歳代~60歳代のどの年齢層においても、受講経験が「ある」人のほうが「ない」人より金融資産の平均保有額は高く、かつ受講経験の有無による保有額の差は年齢が上がるにつれ拡大している。
三井住友信託銀行は、
「今回の分析で、金融教育が資産形成にとって重要なことがわかった」
としている。
なお、調査は三井住友トラスト・資産のミライ研究所が全国の20~64歳の男女を対象に、2022年1月に実施した「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(サンプル数1万780)をもとに、三井住友信託銀行調査部が分析した。調査は今回で3回目。