歴代最長の10年にわたって日銀トップを務めた黒田東彦氏が2023年4月8日、任期満了に伴い退任し、9日付で経済学者として初の日銀トップとなる植田和男氏が新総裁に就任した。
週末を挟んで退任、就任の記者会見に臨んだ2人の「総裁」は互いにエールを送りあう一方で、言葉の端々からは両者の「違い」も浮き彫りになった。
黒田氏の退任会見、異次元緩和の「副作用」は多くを語らず 「2%目標」公約達成できず「残念だ」
「経済、金融、物価などの状況に応じて副作用に対処しつつ、効果的、持続的な金融緩和を継続してきた」
「経済、物価も着実に改善してデフレではない状況を実現できた」
23年4月7日に退任会見に臨んだ黒田氏は、自らが主導した異次元緩和の成果を繰り返し強調した。
ところが対象的に、「副作用」に質問が及ぶと、口調は一気に冷淡になった。
2013年4月の異次元緩和導入時、「2%の物価安定目標を、2年程度を念頭に実現する」と明言した自身の「公約」が果たせなかったことは「残念だ」と一言。
「潜在成長率が伸び悩んでいる」との質問には、「(異次元緩和を続けなければ)もっと下がっていた」と反論してみせた。
「黒田バズーカ」とも呼ばれるサプライズの政策変更で、市場を何度も混乱させてきた理由を聞かれると「サプライズ狙いで政策をしたことはまったくない」と言い切った。
異次元緩和の「メリット」は強調するのに、「副作用」からは目を背ける。最近の黒田氏の「悪癖」が退任会見でも出たかっこうだ。
黒田氏は後任の植田氏にこんな言葉を残している。
「2%目標達成は課題として残っているが、賃金・物価は上がらないというノルム(社会通念)は徐々に変化している。目標実現を期待しています」
「お膳立てはしてやったぞ」ということだろう。