あなたが転職先で満足するか、それとも不満を抱いて後悔するか――。
転職選びでは大事なポイントだが、あなた自身の「日頃の心構え」がけっこう影響することが、マーケティングリサーチの「アスマーク」(東京都渋谷区)が2023年4月10日に発表した「転職後の不満に関する調査~『面接時の説明と違う』が25%超」でわかった。
いったいどういうことか。転職決断の前に参考にしていはいかが。
転職先での満足度、男女ともZ世代がトップ
アスマークの調査は、22歳から56歳までの正社員の男女1200人が対象。それぞれ男女100人(計200人)ずつを次の3世代に分けて分析した。
(1)Z世代(22歳~27歳)=デジタルネイティブ。幼いころからスマホやSNSに触れ合ってきた世代。
(2)Y世代(28歳~41歳)=ミレニアル(新千年紀)世代ともいわれ、2000年代に入って成人を迎えた。バブル崩壊前後に生まれ、IT機器の拡大とともに育ってきた世代。
(3)X世代(42歳~56歳)=ポスト団塊ジュニア(42歳~47歳)、団塊ジュニア(48歳~51歳)、バブル世代(52歳~56歳)の3世代を含む。バブル崩壊頃から就職氷河期時代にかけて成人を迎えた世代。
ただし、今回は世代ごとの違いより、転職して満足だったか、それとも不満だったかという満足度の違いの理由に焦点を当てている。
まず、転職経験者に現在の会社への満足度を聞くと、「とても満足」(9.4%)と「満足」(39.2%)を合わせて、全体の5割弱(48.6%)が満足している。その一方で、「とても不満」(9.8%)と「不満」(11.6%)を合わせて、2割超(21.4%)が不満を抱いていることがわかった【図表1】。
世代別に見ると、Z世代の満足度が男性(58.8%)、女性(60.6%)と、男女ともに各世代でトップであることが目を引く【再び図表1】。元の会社へのしがらみが薄く、転職に積極的であることが影響しているようだ。
次に、「想像より良かったか、悪かったか」という質問の仕方で、「入社前後のギャップ感」について満足度別にみると、興味深い結果が出た。
転職後に不満をもっている人の8割近くが、「想像より悪かった」と強いギャップを感じていた。これは、満足度が高い人の場合の「想像より良かった」という割合より高い【再び図表1】。
「想像より良かった・悪かった」ということが、入社後の満足度に影響する傾向がみられるが、「悪かった」というギャップのほうが、転職後の満足度に大きくマイナスに影響するようだ。
「面接時の話と違う」と不満を持つ人、4人に1人
では、具体的に入社後にどういった項目に良い・悪いギャップを感じるのだろうか。
「教育体制」「成長環境」「給与水準」「休みの取りやすさ」「人間関係」など9つの項目で、就職前後での印象の違いを聞くと(複数回答可)、満足者では「休みの取りやすさ」「従業員の人間関係」「仕事内容」に良いギャップを感じていた【図表2】。特に「休みの取りやすさ」(59.2%)では6割近くの高い比率だ。
一方、不満者は、特に「教育体制」「成長環境」「給与水準」に悪いギャップを感じていた。いずれも7割以上の高い比率だ。しかも、「社風」「従業員の人間関係」「仕事内容」などの項目も、6割以上。そのうえ、9項目全部で「悪いギャップ」が5割以上というありさま。つまり、転職先の会社の「すべて」が気に入らない状態なのだ【再び図表2】。
多くの項目で「想像していたより悪い」というギャップを抱くあまり、かなり感情的になっている傾向さえうかがえる。
このように、入社前後の印象にギャップが生じる理由はどこにあるのか。
【図表3】は具体的な質問項目を、満足者・不満者との間で比較したグラフだ(複数回答可)。
これをみると、満足度に関わらず、「入社してみないとわからないことも多い」が突出して多く5割~6割を超える。特に、不満者が満足者より目立って高かった項目が、「面接で聞いた内容が実際と異なる」(25.8%)で、4人に1人以上に達し、満足者(9.9%)と比べ大きな違いだ。これは注目すべきポイントだといえる。
というのは、「募集要項に書いていなかった」(16.7%)、「面接で聞いても具体的に答えてもらえなかった」(9.2%)といった項目も、満足者と不満者の人ではスコアに大きな差がみられたからだ【再び図表3】。
面接の対応や募集要項に問題があり、情報が正確に伝わっていなかったことが入社後の満足度を低くする一因と推察される。人事担当者が、希望者を増やすために、実態よりも良い印象でアピールすることもあるだろう。しかし、結果的に誤解やギャップを生んでしまい、入社後に不満を持たれて、会社にとってはまずい事態になるわけだ。
転職の満足者は、スキルアップの自主的な努力をしている
ところで、転職経験者はどんな理由で、転職に踏み切ったのか。
転職理由を聞くと(複数回答)、転職後の満足度に関わらず、「給料に不満がある」「会社に将来性を感じない」という理由が2割を超えて突出して多かった【図表4】。特に、満足者に比べて不満者に多いのが「給料への不満」と「体調不良や心身の不調」という理由だ。
一方で、満足者に多いのが、「職場の上司と考えが合わない」「残業時間が多い」「休みがとりにくい」といった理由だ。そうした理由で転職した場合、転職先では環境が改善されることで満足につながりやすい、といったことも考えられる【再び図表4】。
最後に少し視点を変えて、転職経験者自身のスキルアップへの取り組み状況を聞いている。ここでも、とても面白いことがわかった。
スキルアップのために実施していることを聞くと(複数回答)、「資格取得」「セミナー」「セミナーや勉強会の参加」「ビジネス書やスキル向上にための本を読む」など11の項目すべてで、満足者が不満者を上回ったのだ【図表5】。
さらには、「特に実施していることはない」と答えた不満者は半数以上の51.4%に達した。ちなみに、満足者は3割以下の29.9%しかいない【再び図表5】。
「鶏が先か、卵が先か」という古典的命題があるが、満足者は、自ら取り組む成長意欲の高さが転職先での満足度にプラスに働いているのか、それとも満足しているからこそいっそう努力したくなるのか――。
転職先で、あれもこれも気に入らないとマイナス思考に陥る人は、一度、スキルアップの努力を始めてはいかが。
調査を行ったアスマークの担当者は、こうコメントしている。
「転職者の満足度を軸に結果を比較してみました。職場環境を理由に転職した人は、環境変化が満足度向上につながりやすいのではといった示唆や、面接や募集要項で伝えていない情報があると『入社後のギャップ』となり、不満につながってしまうという示唆が得られました。
また、満足している人はスキルアップのために自主的な努力をしている、という結果から、転職者本人の自主的な成長への取り組み意欲が、職場での満足度に影響している可能性があるのでは、といった仮説も考えられそうです。
(転職者を受け入れる企業は)環境作りだけでなく、意識に働きかけていくことも必要かもしれません」
なお調査は、2022年11月22日~25日に全国の22歳から56歳までの正社員男女1200人を対象にインターネットを通じてアンケートを行なった。(福田和郎)