転職の満足者は、スキルアップの自主的な努力をしている
ところで、転職経験者はどんな理由で、転職に踏み切ったのか。
転職理由を聞くと(複数回答)、転職後の満足度に関わらず、「給料に不満がある」「会社に将来性を感じない」という理由が2割を超えて突出して多かった【図表4】。特に、満足者に比べて不満者に多いのが「給料への不満」と「体調不良や心身の不調」という理由だ。
一方で、満足者に多いのが、「職場の上司と考えが合わない」「残業時間が多い」「休みがとりにくい」といった理由だ。そうした理由で転職した場合、転職先では環境が改善されることで満足につながりやすい、といったことも考えられる【再び図表4】。
最後に少し視点を変えて、転職経験者自身のスキルアップへの取り組み状況を聞いている。ここでも、とても面白いことがわかった。
スキルアップのために実施していることを聞くと(複数回答)、「資格取得」「セミナー」「セミナーや勉強会の参加」「ビジネス書やスキル向上にための本を読む」など11の項目すべてで、満足者が不満者を上回ったのだ【図表5】。
さらには、「特に実施していることはない」と答えた不満者は半数以上の51.4%に達した。ちなみに、満足者は3割以下の29.9%しかいない【再び図表5】。
「鶏が先か、卵が先か」という古典的命題があるが、満足者は、自ら取り組む成長意欲の高さが転職先での満足度にプラスに働いているのか、それとも満足しているからこそいっそう努力したくなるのか――。
転職先で、あれもこれも気に入らないとマイナス思考に陥る人は、一度、スキルアップの努力を始めてはいかが。
調査を行ったアスマークの担当者は、こうコメントしている。
「転職者の満足度を軸に結果を比較してみました。職場環境を理由に転職した人は、環境変化が満足度向上につながりやすいのではといった示唆や、面接や募集要項で伝えていない情報があると『入社後のギャップ』となり、不満につながってしまうという示唆が得られました。
また、満足している人はスキルアップのために自主的な努力をしている、という結果から、転職者本人の自主的な成長への取り組み意欲が、職場での満足度に影響している可能性があるのでは、といった仮説も考えられそうです。
(転職者を受け入れる企業は)環境作りだけでなく、意識に働きかけていくことも必要かもしれません」
なお調査は、2022年11月22日~25日に全国の22歳から56歳までの正社員男女1200人を対象にインターネットを通じてアンケートを行なった。(福田和郎)