金融不安がくすぶるなか、市場はインフレ鈍化にすがろうとしているが...
今回のCPI結果とFOMC議事録を、エコノミストはどう見ているのか。
日本経済新聞オンライン版(4月12日付)「米消費者物価5.0%上昇 3月、9か月連続で鈍化」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では、慶應義塾大学総合政策学部の白井さゆり教授(国際経済学)は、
「エネルギー価格が前年比大きく下落したことに加え、いくぶん食料価格の上昇率も低下したことでインフレ率は6%から5%へ低下し、しかも予想を上回る低下となった。しかし、コアインフレ率はむしろ上昇しており、中でも住宅関連の伸び率はむしろ上昇している」
と指摘。今後のFRBの動きについて、
「金融政策判断としてはコアインフレ率を重視する必要があるため、5月は利上げをすると予想されます。ただ、地方銀行の問題がまだくすぶっており、企業への貸出条件が厳格化している兆しもあるため、これ以上の利上げは行われない可能性があると思います。市場は早々と比較的早く利下げが行われる見通しに傾いていますが、利下げについては、FRBは慎重に判断をするのではないでしょうか」
と予想した。
同欄で、日本経済新聞社特任編集委員の滝田洋一記者は、
「米CPIはいつもサプライズ。3月のCPI上昇率は前年同月比で5.0%と、2月の6.0%に比べて1.0ポイントも低下しました。今回のCPI発表に誰よりも胸をなで下ろしているのは、イエレン財務長官とパウエルFRB議長でしょう。ただし3月のCPI鈍化はガソリン価格の低下のおかげが大ですから、先行きに『油断』は禁物です」
と注意を呼びかけた。そのうえで、
「CPI発表前に強含んでいたドルは、CPIの発表を受けストンと下落しました。それ以上に目立つのが米国株。ダウ先物が一時3万4000ドル台に乗せ、率直にCPIの鈍化を寿(ことほ)いでいます。米金融不安がくすぶるなか、市場参加者はインフレ圧力の鈍化にすがろうとしています。幾度となく見た光景です」
と、ウォール街の一喜一憂を皮肉った。