2022年度の全国の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は、前年度を883件上回る6799件が発生し、3年ぶりに増加した。帝国データバンクが2023年4月10日に発表した。
企業の倒産件数は22年5月以降、この3月まで11か月連続して前年同月を上回っており、増加期間はリーマン・ショック後の08年6月~09年8月(15か月連続)に迫りつつあるという。
また、負債総額は2兆3385億9100万円で、前年度(1兆1828億7100万円)のほぼ2倍に膨らんだ。
企業倒産「潮目が明らかに変わりつつある」
2022年度の企業倒産の動向は、コロナ禍で経営体力が落ちているところに「物価高(インフレ)」「人手不足」「ゼロゼロ融資」「円安」「社会保険料の負担増」など四重、五重の苦境が襲い、事業継続を断念した中小企業が多い点が特徴だ。
企業の倒産件数をみると、2022年度は6799件で前年度を883件上回った。
特に、この3月は800件(前年同月は587件)にのぼり、月500件台の水準を大きく超え、単月としてはコロナ禍直後の20年7月以来2年8か月ぶり、3月としては17年以来6年ぶりに800件台に達した。
帝国データバンクは、
「2023年度半ばと想定されるゼロゼロ融資の返済が本格化する前に、足元の企業倒産は増加基調を強めており、倒産動向の『潮目』が明らかに変わりつつある」
としている。
また、2022年度の負債総額は2兆3385億9100万円で、前年度(1兆1828億7100万円)のほぼ2倍に膨らんだ。
背景として、1兆円を超える負債を抱えて経営破たんした自動車部品製造のマレリホールディングス(22年6月民事再生法)、有機ELディスプレイ製造のJOLED(23年3月民事再生法)など、負債100億円を超える大型倒産が12件発生したことで、4年ぶりに前年度を上回る多さとなった。
これにより、22年度の負債総額はエアバッグ製造大手のタカタ(17年6月民事再生法)が破たんした17年度(2兆5932億2600万円)以来、5年ぶりに2兆円台に達した。
規模別にみると、企業倒産の7割超が負債1億円に満たない中小・零細企業で占める状況に変わりはないものの、20年度をピークにその割合は低下している。一方、負債1~10億円クラスの割合は高まるなど、中堅クラスの倒産も増加の動きが強まっている。
倒産まだ増える? 2023年度は「ゾンビ企業」の動向気になる
全国の企業倒産の中で、急増したのが物価高(インフレ)倒産だ。
2022年度の企業倒産のうち、インフレが原因で倒産した企業は463件が発生。前年度の136件から3.4倍に急増して、過去最多を更新した。
業種別にみると、原材料の高騰が続く「製造業」と「建設業」が90件を超えた。前年度から、最も大きく増えたのは、燃料費の高騰などの影響を受けたトラック運送業など「運輸業」で、前年度から4.6倍に急増した。
また近年、中小企業で多発している後継者難を原因とする倒産は、2022年度に487件が発生。前年度の476から、2.3%増えた。年度ベースで過去最多を更新した。
2022年の後継者不在率が60%を下回り過去最低を更新するなか、事業承継を円滑に進められなかった中小企業の倒産が増加している。なかでも、「代表者の病気・死亡」が直接的な原因となった倒産は全体の半数を占め、高止まりの傾向が続いているという。
帝国データバンクによると、稼いだ利益で借入金の利子を支払えない(国際決済銀行〈BIS基準〉の定義に基づく)「ゾンビ企業」の数(推計)が、2021年度に全国18.8万社にのぼり、前年度(推計16.6万社)から2年連続で増加する傾向が続いていた。
18.8万社のうち、実際に経常赤字などの「収益力の改善」が課題の企業は、ゾンビ全体の6割にのぼる。また、「過剰債務の解消」や、債務超過など「資本力の改善」が課題の企業もそれぞれ4割程度を占めている。これら3つの課題がすべて該当する企業も約2割の3.3万社となっていた。
つまり、年間の倒産件数の約5倍に匹敵する規模の企業が、「潜在的な倒産リスク」を抱えていることを示していた。
今後、ゼロゼロ融資の返済が本格化することや、金利の上昇局面なども予想される。それらを踏まえると、ゾンビ企業から事業継続を断念したり、仕入増や人件費増、設備増強に伴う運転資金の需要に資金調達が追い付かない「黒字倒産」の発生が懸念されたりと、中小企業の倒産が相次ぐ可能性がくすぶる。
同社は、
「こうした資金繰り負担に耐えきれない中小企業の『淘汰』や『選別』が一段と進む可能性がある。自社の経営体力に見合わない過大な借入金を背負った中小企業の出口戦略が早急に求められている」
と指摘。
そのうえで、2023年度の企業倒産は、コロナ禍前の水準(年8000件台)も視野に、「緩やかな増加局面が続きそう」とみている。