大手回転ずしチェーン「スシロー」などを展開するFOOD & LIFE COMPANIES(フード&ライフカンパニーズ、F&L)が、全国のスシローなどの店舗から出る使用済み食用油を次世代航空燃料に活用する。
大手外食チェーンが全国規模で取り組むのは初めてといい、社会貢献の手法として注目されそうだ。
サファイアスカイエナジー、早ければ24年下期からSAFを生産開始へ
次世代の航空燃料は「SAF=Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)」と呼ばれる脱炭素燃料だ。SAFは主に植物などバイオマス由来の原料や、飲食店や家庭から出る廃食用油などを原料とする。
F&Lは傘下のスシローと大衆寿司居酒屋「鮨酒肴杉玉」の計約680店舗で使用した廃食用油(年間約90万リットル)をバイオ燃料専門の回収業者レボインターナショナルを通じて、バイオ燃料を開発・製造するSAFFAIRE SKY ENERGY(サファイアスカイエナジー)に提供する。
サファイアスカイエナジーは、日揮HDとレボインターナショナル、コスモ石油の3社が、国内の廃食用油の回収とSAFの製造・供給に向けたサプライチェーンの事業化を目指し、2022年11月に設立した。
大阪府堺市で日本初の国産SAFの大規模プラントを建設中で、2024年下期から25年初頭の生産開始を目指すという。
JALグループLCCのジップエア・トーキョー、SAFを一部活用 SAFの普及に課題は?
SAFをめぐっては、J-CAST 会社ウォッチが「JALグループLCCのジップエア・トーキョー、カーボンニュートラルフライト実施...成田~ホノルル線 通年では世界初、なぜできる?」(2023年3月1日付)で報じたように、日本航空(JAL)子会社の格安航空会社(LCC)ジップエア・トーキョーも活用している。
同社は「2023年4月から成田―ホノルル線でカーボンニュートラル(二酸化炭素=CO2=排出量の実質ゼロ)を実現する」と23年2月に発表した。
ただし、ジップエアが成田―ホノルル線で使うSAFは年間燃料搭載量の約1%に過ぎず、残りは「排出権取引制度」を活用して、通年でカーボンニュートラルを実現する。
というのも、現状でSAFは、従来のジェット燃料に比べて「製造コストが2~10倍かかる」(業界関係者)うえ、バイオマスや廃食用油など十分な原料の確保が必要だからだ。
つまり、安定的な製造とコストダウンが課題。それだけに、スシローのような大手外食チェーンが原料となる廃食用油を提供する意義は大きい。
F&Lは「多種多様な海洋水産・農林資源を原材料としていることから、気候変動を重要な経営リスクのひとつとして位置づけてきた。廃食用油を再利用する取り組みに参加することで、さらなる気候変動対策に貢献したい」と説明している。
消費者としても、同じ回転ずしを食べるなら、次世代の航空燃料の生産に貢献したいと考えるのではないか。その意味では、大手外食チェーンの社会貢献とイメージアップにもつながる。
スシローに続く大手外食チェーンはどこか、関心を集めている。(ジャーナリスト 済田経夫)