急転したトヨタのEV戦略
巻頭特集は、「トヨタ 急転のEV戦略」だ。トヨタ自動車の佐藤恒治社長を筆頭にした新しい経営体制を紹介したうえで、EV(電気自動車)巻き返しの戦略を取り上げている。
「25年のEVの生産台数を、今の水準から一気に4倍近く引き上げるとの打診が来ている」とは、部品メーカーの首脳。一方で、トヨタ幹部も「25年には国内だけで18万~20万台規模のEV生産体制を整備したい」。
もっとも、EVに必要な大容量電池の価格は高く、ガソリン車などに比べて生産コストがかさむため、採算的には厳しい。米フォード・モーターが公表した23年のEV事業の収支見通しは30億ドル(約3900億円)の赤字だという。
一方、テスラは22年12月期に営業利益率16.8%をたたき出しており、ようはやり方次第だとう。
トヨタは内燃機関やHV(ハイブリッド車)、燃料電池車(FCV)、水素エンジン車も重視する「全方位戦略」も捨てていない。
欧州での全面EVシフトに「待った」がかかり、トヨタの「全方位戦略」にも先見性があったことが最近、評価されている。
とはいえ、EV対策をおろそかにするわけにはいかない。ソフトウェア領域でトヨタの命運を左右するのは、子会社「ウーブン」だと見られ、自動車会社から「モビリティカンパニー」へ生まれ変わる中核事業を担うという。
変化が激しい自動車業界の記事の充実をさらに望みたい。(渡辺淳悦)