J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

過熱する首都圏の中学受験...ダイヤモンド「中高一貫校」、東洋経済「保険動乱」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする(「週刊エコノミスト」は先週合併号のため今週は休み)。

首都圏の中学受験者数は過去最高に

   4月10日発売の「週刊ダイヤモンド」(2023年4月15日号)の特集は、「わが子が伸びる 中高一貫校」。2023年の中学入試において、首都圏の受験者数、受験率はともに過去最高を記録した。第一志望に進学したのは3割ほどにすぎないという。最新の入試分析は参考になるだろう。

   過熱の一途をたどる首都圏の中学受験。2023年入試の受験者数は、私立中学と国立中学を合わせて5万2600人(首都圏模試センター調べ)と、過去最多だった前年を上回った。受験率も17.86%と過去最高になった。

   23年入試について、「付属校人気が一服する一方で、難関校や上位校への回帰が起きた。コロナ禍が終息に向かい始め、隣県などからの越境入試組が戻ってきたため」と、森上教育研究所の森上展安代表は指摘する。

   このほかに、公立中高一貫校の受験者が17386人いる。このうち、約6700人が私立・国立中学と併願したと見られる。公立の適性検査型入試を導入する私立が増えたことで、公立志望組の併願が、私立の受験者数を押し上げているようだ。

   公立の学費で6年間の一貫教育を受けられる東京都立中高一貫校は、ピーク時には受験倍率が10倍を記録した学校も出たが、21年、22年と2年連続で倍率が急降下した。コロナ禍の影響と見られたが、23年でも倍率は元に戻ることはなく、逆に4.2倍と22年の4.4倍よりさらに下降してしまった。

   しかし、決して入試が易しくなったわけではないという。都立中の適正検査は深い思考力が問われる内容で、大人でも答えにちゅうしょするレベル。そのことが浸透し、いわゆる「記念受験層」がほぼいなくなり、倍率は低下したが、偏差値はあまり変化がないようだ。

   共学人気が続く中、首都圏では一部の伝統女子校が受験者数を伸ばしている。全国のトレンドとは真逆の現象が起きている。

   同誌では、跡見学園、恵泉女学園、実践女子学園、三輪田学園、山脇学園の受験者数の推移を示し、4年間で約2倍に増えた原因を探っている。

   近年は共学校や新設校に志願者が殺到する傾向があったが、中学受験が一般化した首都圏では保護者のニーズも多様化し、伝統校の良さが再認識されているようだ。

   関西でも受験者数は1万7279人と、小学6年生が減少する中で前年より387人増加。受験率も14年ぶりに10%を超えた。灘中をはじめ、難関校が軒並み復活した。

   意外なところでは、北野高校や天王寺高校といった超進学校を擁する公立王国の大阪で、中学受験が増えていることだ。日能研関西の森永直樹取締役は「北野や天王寺などトップ校の文理科が非常に難化しているのに加え、大阪市内にタワーマンションが林立したため高所得者層が増え、私立の中高一貫校でゆったりと育てたいと考える親が増えている」と説明している。24年入試は、大阪も含めてさらに激化することは必至なようだ。

   「中学受験は課金ゲーム」だという、漫画のせりふが知られるようになった。

   同誌の調べでは、小学校4年~6年の3年間の費用は約250万円。もっとも、この金額は下限に近いそうだ。このほかに個別指導や家庭教師、他の塾との併用などで数十万円の「追加課金」も。

   さらに私立中学校の学費は、寄付金などを除いても3年間で250万円前後が必要となる。年収1000万円以上の世帯がおよそ6割を占め、これが中学受験における標準プレーヤーなのだ、と締めくくっている。

総合商社が就職人気企業ランキングで上位に

   第2特集は「就職人気企業ランキング」。

   2023年卒大学生の就職内定率は、90.9%と前年から1.2ポイント上昇した。コロナ禍が終息に向かいつつあることから、24年卒の採用予定数は拡大が見込まれている。

   政府主導の採用ルールでは採用広報開始が3月、採用選考開始が6月と定められているが、3月時点で内定を獲得した学生は15.3%と早期化が進んでいる。

   ダイヤモンド就活ナビ2024に会員登録している就活中の学生を対象にしたアンケート調査による人気企業ランキングを掲載している。パワーゾーンの文系男子は1位伊藤忠商事、2位三菱商事、3位三井物産、4位丸紅、5位三井住友銀行、6位住友商事と、総合商社が上位を占めた。

   ウクライナ情勢による資源・エネルギー価格の高止まりを受け、2022年3月決算では大手7社が過去最高益を達成。23年3月期でも三菱商事、三井物産、丸紅の3社が過去最高の純利益を見込むなど業績は好調だ。

コロナの入院給付金が1兆円近くに

   「週刊東洋経済」(2023年4月15日号)の特集は、「保険動乱」というショッキングなタイトルだ。コロナ患者への総額1兆円近い保険金支払いを迫られている生命保険。インフレで車両修理費などのコストが急速に膨らむ損害保険。両業界の実情に迫っている。

   コロナ患者支援で、生命保険各社の経営環境が激変したという。なぜ、こんなことになったのか。

   厚生労働省は2022年1月下旬、自治体の判断で、本人が提示する簡易検査の結果を用いて医師が新型コロナと診断できるようにした。これにより、宿泊施設や自宅で安静・療養を行う、いわゆる「みなし入院」が一段と増加した。言うまでもなく、オミクロン株の流行で、医療機関が軽症者であふれかえる事態が起きたためだ。

   コロナ禍当初の20年は、みなし入院に対する給付金の支払件数は、業界全体で毎月2000件前後しかなかったが、22年に入ってからは、一気に50万件前後にまで膨らんだ。

   23年に入り、件数は月30万件前後にまで落ち着いたが、それでも前年同月の3倍以上の水準で、生保各社の事務負担が大きい状態が続いている。

   財務上の負担も大きい。これまで生命保険業界が、みなし入院に対して給付金を支払った件数は累計で1000万件を超えており、金額では9300億円と1兆円に迫る勢いだ。

   その裏では、問題が起きていた。入院給付金の不正請求だ。新型コロナ陽性とされた人でも、無症状だったり、体がだるいといった程度の軽症者であったりする場合が多かった。

   そのような中で、陽性になってから、そのことを告知せずに医療保険を契約し、すぐに給付金を請求していると疑われる事例が、急増したのだという。

   神奈川県などが「自主療養制度」を開始したタイミングと重なり、「性善説」に立った制度が悪用された形になった。生保各社は昨年9月、みなし入院に対する給付金の支払い対象を、高齢者など重症化リスクの高い人に限定する措置を取ったが、そこには不正請求の未然防止という要因もあったそうだ。

   さらに、業界最大手の日本生命は不正請求防止の観点から、医療保険などの大幅改定に踏み切った。日帰り入院の際に支払う給付金の最高設定額を、40万円から30万円に引き下げたほか、今年4月2日以降の契約については、契約から14日間は所定の感染症は保障の対象外とする「不担保期間」を一部商品に導入。

   ほかの生保各社も追随すると見られ、契約後すぐに保障開始することが特徴だった医療保険が、大きく様変わりすることになる、と指摘している。この不正請求問題はあまり知られていないが、コロナ禍の影の一つだろう。

急転したトヨタのEV戦略

   巻頭特集は、「トヨタ 急転のEV戦略」だ。トヨタ自動車の佐藤恒治社長を筆頭にした新しい経営体制を紹介したうえで、EV(電気自動車)巻き返しの戦略を取り上げている。

   「25年のEVの生産台数を、今の水準から一気に4倍近く引き上げるとの打診が来ている」とは、部品メーカーの首脳。一方で、トヨタ幹部も「25年には国内だけで18万~20万台規模のEV生産体制を整備したい」。

   もっとも、EVに必要な大容量電池の価格は高く、ガソリン車などに比べて生産コストがかさむため、採算的には厳しい。米フォード・モーターが公表した23年のEV事業の収支見通しは30億ドル(約3900億円)の赤字だという。

   一方、テスラは22年12月期に営業利益率16.8%をたたき出しており、ようはやり方次第だとう。

   トヨタは内燃機関やHV(ハイブリッド車)、燃料電池車(FCV)、水素エンジン車も重視する「全方位戦略」も捨てていない。

   欧州での全面EVシフトに「待った」がかかり、トヨタの「全方位戦略」にも先見性があったことが最近、評価されている。

   とはいえ、EV対策をおろそかにするわけにはいかない。ソフトウェア領域でトヨタの命運を左右するのは、子会社「ウーブン」だと見られ、自動車会社から「モビリティカンパニー」へ生まれ変わる中核事業を担うという。

   変化が激しい自動車業界の記事の充実をさらに望みたい。(渡辺淳悦)