植田日銀「4つのプレッシャー」、政府・安倍派・市場・海外の中銀
こうした発言の背景について、新聞各紙はこう報じた。
朝日新聞「植田日銀 配慮の船出」では、政権との距離感が焦点だと指摘した。学者出身の植田氏はもちろん、副総裁の氷見野良三(ひみの・りょうぞう)前金融庁長官、内田真一前日銀理事とも政府・与党との人脈や交渉手腕が未知数だという。
《ある日銀幹部は、「3人とも理屈で考えて、永田町の雰囲気を感じ取らずに突き進むことはあり得る」と漏らす》
前総裁の黒田東彦氏は安倍晋三元首相と蜜月関係にあり、日銀の独立性が懸念されるほどだったが...。
《みずほ証券の上野泰也氏は「政府と日銀で完全に意思が一致していればいいが、ずれがあった時に、水面下のやりとりも含めてどう調整していくかが新体制の課題の1つ」という。
違う見方もある。大和証券の岩下真理氏は「これまで政府に忖度していた場面もあった。学者らしく、あくまで(日銀の)展望リポートと政策を結び付けて整合的に判断していくべきで、それが植田色になる」。》
産経新聞「市場・政治との対話重要」は、今後、「植田日銀にかかるさまざまなプレッシャー」として次の4つをあげた。
(1)政府:企業が賃上げや投資をしやすい政策を続けてほしい。
(2)安倍派:異次元緩和を堅持してほしい。
(3)市場:政策修正や引き締めへの転換はいつ?
(4)米国など海外の主要中央銀行:近く利上げ停止か。
このように四方から難題に囲まれた「植田日銀」だが、毎日新聞「『植田日銀』船出、波高し」は、最大の難問は、「黒田前総裁が残した緩和策のマイナス面という『宿題』」だと指摘した。
同紙によると、現在、日銀の保有国債残高は約581兆円に拡大、保有比率は政府の国債発行残高の半分を超える。また、株式市場活性化のため大量購入してきた上場投資信託(ETF)の時価総額は50兆円を超える。株式市場の日銀依存が高まっているのだ。
こうした状況下で日銀が政策修正に踏み切れば、市場だけでなく、政府にも大打撃を与える。同紙はこう指摘する。
《日銀が利上げに踏み切れば長期金利が上昇し、国債の利払いや償還に充てる政府の費用は一気に拡大して、ただでさえ先進国で最悪の財政状況はさらに深刻化する》
《ある官邸幹部は(中略)欧米の金融システム不安や世界経済の減速リスクを指摘し、「今はサプライズしないことが何より大事だ」とクギを刺す。》