「思っていたよりハト派!」。2023年4月10日、日本銀行の植田和男総裁(71)が就任後初の記者会見を行ない、現在の大規模な金融緩和について「続けていくのが適当だ」と語った。
早期の修正があるのではと市場が警戒していた「YCC」(イールドカーブ・コントロール)についても「継続することが適当だ」と語り、市場は好感。日経平均株価は前日に比べて一時400円以上値上がりし、日米金利差が意識され、ドル円レートは1ドル=133円半ばにまで円安が進んだ。
植田氏にはエコノミストの間で「日銀改革」への期待感があったが、いったい何があったのか。新聞報道とエコノミストの分析で探ると――。(新聞はいずれも4月11日付)
植田氏「つらいことがあっても、明るく粘り強くやっていく」
日本銀行公式サイトにある「日本銀行動画チャンネル 総裁・副総裁就任記者会見」や新聞報道をまとめると、植田和男総裁の発言のポイントは、次のとおりだ。
【抱負】
日本銀行の使命である物価の安定と金融システムの安定の実現に向け、力を尽くしてまいりたい。つらいことがあっても、明るく粘り強くやっていく。
【2%の物価目標】
できるだけ早く達成を目指す。外的なショックがあれば難しくなるし、そう簡単な目標ではない。
【金利やYCCをめぐる政策基本方針】
現在の日本では、金利を大幅に上げる状況ではない。マイナス金利政策は、現在の強力な金融緩和のベースになっている政策だ。副作用もあり、金融機関の収益への影響は大きいが、マイナスの影響を小さくする工夫がなされている。インフレ率がまだ2%に達していない状況では継続するのが適当だ。
(国債を買って長短金利差を操作する)YCCは、海外金利が低下したことで、総じて前よりスムーズになっている。現状の経済、物価、金融情勢を鑑みると、市場機能に配慮しており、継続することが適当だ。
【緩和政策の副作用の点検・日銀と政府の共同声明見直し】
金利操作、ETF(上場投資信託)の購入で、副作用はあった。強力な金融緩和が20年続いているので、全体を総合的に評価する点検や検証があってもよいと思うが、政策委員会と議論する。
(共同声明の見直しは)特に何も考えていない。現在の情勢を前提とする限り、見直す必要がない。
【金融緩和策の出口戦略】
経済・物価・金融情勢を丹念に的確に把握し、基調的な物価の動きや、インフレ率が本当に安定的・持続的に2%に達成するかを見極め、適切なタイミングで正常化する。一方、難しいのなら副作用に配慮しつつ、より持続的な金融政策の枠組みを探っていく。
【欧米の金融不安】
欧米の一部の金融機関に不安感が広がったが、各国当局の迅速な対応で個別の問題であるという認識が広がり、市場は落ち着きを取り戻しつつある。日本の金融機関は充実した資本、十分な流動性を備えており、現時点で、我が国経済に大きな影響を与えるとは見ていない。ただ、今後の状況を注意していく。
【世界経済のゆくえ】
世界経済はややスローダウンの方向に入っており、下振れリスクもある。日本経済の今後の情勢判断にあたり、その点を考慮して、政策判断・決定にあたりたい。