CXを成功させる5つのポイントは?
第2部では、地方のパイプメーカーが舞台。財務部長は、取引銀行からコンサルタントによるCXを行うのが、融資の条件だと切り出され、ワンマン社長も仕方なく応じる。
コンサルタントが調べると、本業の工業用パイプは順調なのに、OEM事業が本業の利益を食っている元凶であることが分かった。OEM事業からの撤退と人員削減しかない。それをのまなければ、銀行から融資を引き上げると言われ、ぐうの音も出ない社長。
社長は得意先とのゴルフコンペを口実に、希望退職制度の説明会には出ないと逃げ、発表の朝、地元紙に大規模リストラの記事が出た。妨害のためのリークに違いなかった。
説明会は混乱したが、その後、人員削減はスムーズに進んだ。しかし銀行側は、CXはまだ完了していないとして、役員の刷新と社長の交代を求めた。
第2部の解説として、著者は「希望退職とは『悪』なのか」と問題提起し、倒産してからでは遅い、としている。
さらに、「誰を置くか」は社員に対する明確なメッセージだと説明。ワンマン社長を退かせ、営業部長を新社長とするストーリーで締めている。
本書は、CXを成功させるポイントの5カ条を以下のように挙げている。
1 トップダウンで進める体制をつくること。トップが権限委譲した少数精鋭のチーム
2 関係者を巻き込みすぎず、少人数で検討して決断すること
3 実務に通じた若手メンバーを巻き込むこと
4 構造改革は妥協せず、とことん切り込んでやり抜くこと
5 責任者の役割・権限を明確に定義し、強いオーナーシップを持たせること
逆回転を許さない「腹決め」と「仕組み作り」こそが、成功の秘訣だそうだ。
最近よく聞くDX(デジタルトランスフォーメーション)との関係について、DXを進めるうえでCX(コーポレートトランスフォーメーション)はコインの裏表であり、CXなくしてDXは成しえない、と説明している。
そして、抵抗勢力といかに戦うかが勝負だとも。サブタイトルが「修羅場の経営改革ストーリー」である訳だ。(渡辺淳悦)
「企業変革(CX)のリアル・ノウハウ」
木村尚敬・小島隆史・玉木彰著
PHPビジネス新書
1155円(税込)