医療保険の保険料への上乗せが有力? ただし、中・低所得者ほど負担が重く 企業の拠出金増で「賃上げ機運」に影響も
さらに、肝心の財源だが、岸田政権は2022年末、防衛費の増額を決めたが、歳出削減や資産売却で捻出できる財源は防衛費に充てることを決定済みだ。
一方、首相は少子化対策のための当面の消費税などの増税を否定している。このため、財源は、社会保障費の中でのやりくりや、医療保険など社会保険料への上乗せが有力視されている。
なかでも、すでに既定路線化しているのが、医療保険の保険料に少子化対策分を上乗せして徴収する案だ。
年金は働く世代が保険料を払い、すでに払い終わった高齢者に支給する仕組みで、その保険料に上乗せするのは働く世代に負担が偏る。介護保険料も40歳未満は納めていないため、負担の偏りが避けられない。
その点、医療保険料は現役世代から75歳以上の後期高齢者まで幅広い世代が負担しているから、少子化対策を「全世代で支える」のにふさわしいという理屈だ。
ただ、そもそも「保険とはリスクに備えるものだが、子育てはリスクではない」(土居丈朗慶応大教授)。社会保険料は所得が増えても上限があるため、累進課税の税金に比べ中・低所得者ほど負担が実質的に重くなる逆進性がある。
現実の問題として、保険料は労使折半の負担で、企業にとっては拠出金が増え、経営の重荷となり、従業員の賃上げ機運に水を差す恐れがある。
経済同友会の桜田謙悟代表幹事は4月4日の記者会見で「また社会保険料か。どうして消費税が出ないのか、正直に言って、個人的には非常に疑問。財源は税というかたちで持続可能性を求めていくべきだ」と述べた。
ちなみに、防衛費の増額の一部は増税を充てることになっており、年末の税制改正までに具体化することになっており、ここでも法人税などが候補と目され、経済界は警戒している。