先送りされ続ける財源議論...実現性に疑問符つく施策も 「児童手当」拡充には1兆円超必要だが...
メニューをこのように並べると、盛りだくさんで思い切った施策が並んでいるように見える。
ただ、政策と財源は、表裏一体。その財源について、首相が年明けに「異次元の少子化対策」を表明した段階で数兆円規模が必要になることはわかっていたのに、4月の統一地方選や衆参両院補欠選挙を控えて、国民の「負担増」に直結する議論を開始することに、与党内で警戒感が拡大した。
このため、岸田首相は「まずは内容の精査」として、財源論議を封印してきた。したがって、メニューの議論のタガが緩み、与党の要望を並べる色彩が強まった。
それでも、必要な施策なのだからいいかといえば、財源も含めて考えると、効果や実現性に疑問符が付くものも多い。
たとえば大きな焦点になった児童手当は、支給対象児童数が約1600万人(2021年度)、給付総額は約2兆円に上り、拡充には少なくとも1兆円超の財源が必要とされ、対象や給付額の決め方次第ではさらに膨らむ。
所得制限は「撤廃」と明記したが、現在は不支給の高所得世帯(子ども2人のモデル世帯で年収1200万円以上)、月5000円の特例給付のみの世帯(同960万円以上)にまで支給することには、慎重論は根強い。
4月7日の「こども未来戦略会議」の初会合でも経済界の委員から「国の財政は非常に苦しい。所得制限撤廃というのはいかがなものか」などの声が出た。
保育士配置基準の改善も、保育士を多く配置しようにも、保育士不足が続く中で人材を確保できずに、むしろ運営できなくなる施設が出る懸念も指摘される。
首相肝煎りの男性の育児休業取得促進策も、実施時期は財源次第になる見込みで、「24年度中は難しいのでは」との声が早くも政府関係者から聞かれる。