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TPPへの「英国」加盟で、次の難題は「中国」との加盟交渉...厳しいルール、どこまで飲むか? 「台湾」との関係も焦点に

   環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に参加する日本など11か国は2023年3月末、英国の加盟を認めることで合意した。

   TPPが2018年に発効して以降、初の新規加盟国で、今後のTPP拡大に大きな一歩となる。他方、これでいっそう注目の的となったのが中国だ。中国もすでに加盟申請をしているが、英国のいち早い加盟により、中国の加盟は不透明感を増してきた。

  • TPPに英国が加盟へ(写真はイメージ)
    TPPに英国が加盟へ(写真はイメージ)
  • TPPに英国が加盟へ(写真はイメージ)

20年末にEUを離脱した英国、アジア太平洋地域との連携強化でTPPへ参加

   TPPは2016年に、米国や日本、オーストラリア、カナダ、ベトナムなど12か国が署名した。しかし翌17年、米国のトランプ政権が離脱を表明。交渉は一時、暗礁に乗り上げたが、18年には米国を除く11か国だけで何とか発効に漕ぎ着けた。英国が12か国目の加盟国となることで、全加盟国の国内総生産(GDP)は世界全体の約13%から約16%に拡大する。

   英国は20年末に欧州連合(EU)からの離脱を完了した。これにより、欧州での存在感の低下が懸念されたが、英国は日本やアジア太平洋地域との連携を図る必要があると判断し、21年にTPPに加盟を申請。自由貿易の枠組み拡大を望むTPP加盟国にとっても、歓迎すべきものだった。

   この英国加盟により、今後の他国との加盟交渉への注目度が増してきた。

   すでに、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイの中南米諸国が加盟を申請しているが、焦点は同じように加盟申請している中国と台湾の動向だ。

   中国は台湾統一を目指す意思を明確にしており、台湾有事の懸念も強まっている。加えて、米国と中国との対立が激化する中、ロシアによるウクライナ侵攻に絡み、中国はロシア寄りの姿勢を鮮明化している。

中国のTPP加盟には、日本、豪州、カナダ、英国など、警戒感から慎重な姿勢

   欧米を中心とした自由主義諸国の中国に対する不信感が大きくなる中、日本やオーストラリア、カナダなどは、中国への警戒感を高め、TPP加盟には慎重とされている。

   加盟国の一部は中国との貿易拡大を重視し、寛大な姿勢を見せているといわれる。だが、日本などと同様に、中国に厳しい立場をとる英国の加盟で、「中国の加盟交渉が困難になるのは必至」という見方が広がっている。

   TPPはもともと、高い水準のルールで自由貿易を実現しようというのが特色で、これが東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などとは異なるポイントだ。社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革などの厳しい条件を受け入れてTPP加盟を果たした。

   これに対し、中国がどこまで厳しい条件をのむかも不明だ。逆に、自由貿易を基本とする台湾は、厳しいルールを受け入れる可能性が高く、「中国より台湾の方が早く加盟が認められるかもしれない」(貿易関係者)との観測もある。

   もし、中国が加盟を認められないのに、台湾が認められるとなれば、中国の反発は避けられない。中国とTPP加盟国との対立に発展する可能性もあり、中国を巡る加盟交渉はさまざまな観点から注視されている。(ジャーナリスト 済田経夫)