2023年の中途採用獲得競争が激化しており、「例年よりも即戦力の中途が採用しにくくなっている」とつぶやく採用担当者が多いようだ。
ビズリーチ(東京都渋谷区)が2023年3月27日に発表した中途採用についての調査結果をみると、およそ9割近い採用担当者が「即戦力人材の採用何度が上がっている」と回答しており、2021年調査と比較しても11ポイントほど上昇している。
企業側の採用競争が激しくなっていることで、求職者側が選べる「売り手市場」に近づいているらしい。転職を考えている人には朗報かもしれない。
中途の採用激化! 求職者は「経営者」、「事業部門責任者」からのスカウトはうれしい
この調査は2023年2月13日から2月19日まで実施されたもので、対象はビズリーチを導入している企業の中途採用担当者272人と、ビズリーチの会員693人を調べた。
はじめの質問では、「直近1年で、即戦力人材の採用何度は挙がっていると感じますか」と尋ねた。結果は「全体的に上がっていると感じる」が「53.3%」、「一部職種で挙がっていると感じる」が「34.9%」となり、合わせて「88.2%」の中途採用担当者が中途採用の難度が上がっていると感じている。
なお、「全体的に難度は上がっている」の数値は2021年の調査と比較して13.4ポイントの急激な上昇となっており、優秀な人材の獲得が激化しているようだ。
続いて、ビズリーチ会員に「スカウトを受け取ったことをきっかけに、その企業への興味・関心意欲が高まった経験がありますか」と聞いたところ、会員の「86.6%」が企業への関心が高まったと答えた。企業から送られてくるスカウトは潜在層に対するアプローチ効果が高いようだ。
また、誰からスカウトが来るとうれしいかを調査すると、「経営者」(37.6%)、「事業部門責任者」(35.3%)、人事責任者(15.6%)という結果になった。「経営のトップから来るスカウト」と「事業部門責任者から来るスカウト」がともに3割を超える候補者から信頼を得ている。
つぎに、企業がスカウトを送る場合には、自社をアピールし、採用につなげるねらいから採用選考の前段階として、カジュアルな面談を実施することが一般的になってきている。
そこで、カジュアルな面談でどのような情報を得ることを期待するか、ビズリーチ会員に質問したところ、「業務内容や期待される役割」と回答した人が「74.3%」と最も多くなった。次いで「自身にスカウトを送った理由」が「48.6%」、「会社の組織やビジョン」が「40.7%」の順になった。
この結果を踏まえて同社では
「これらの結果から、具体的にどのようなポジションで採用したいのか、なぜスカウトを送ったのかについて経営者や事業部門責任者が候補者にあわせてコミュニケーションを取りながら採用活動にコミットする必要があることがわかります」
とコメントしている。
人材獲得には、事業部門との連携が必要 ただし、問題は「多忙で時間がないこと」
一方で、採用活動のうち「事業部門で実施している項目」を聞き出してみると、事業部門が実施している項目としては「1次・2次面接」(82.%)、「人材要件・応募要件の設計」(68.5%)など、選考に関する内容が高い結果に。一方、「スカウトを送信する候補者の選定」は52.3%、「スカウト文の作成」などは40.4%にとどまった。
また、事業部門が中途採用業務に関わるなかでの課題は、「採用業務を行う時間をとりにくい」が59.2%と最も高い結果となった。
これについて同社では
「即戦力人材の採用難度が高まるなか、選考に入る前段階の採用活動であるスカウト送信候補の選定からスカウト文作成、カジュアルな面談までを事業部門が担当することで求める人材の採用成功につながるため、今後事業部門がより採用にコミットできる採用体制が求められます」
と指摘している。
調査結果全体について、ビズリーチ代表取締役社長の酒井哲也氏は、次のように説明している。
「今回の調査で、即戦力採用の難度が2021年の調査よりもさらに高まっていることがわかりました。人的資本経営などが重要視されるなか、採用は経営課題と直結したものになり、全社一丸となった採用活動に取り組む必要があります。
人事がプロジェクトマネジメントの役割を担い、事業部門が採用にコミットすることで採用成功を目指す『部門主導の採用』の推進が、これまで以上に求められるでしょう」