アフィリエイト「A8ネット」のファンコミュニケーションズ...社員の平均給与はいくら? 気になる業績や株価の推移もチェック!【よくわかる企業分析】

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?

   上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、国内最大級のアフィリエイトサービス・プロバイダ(ASP)「A8ネット」などを運営するファンコミュニケーションズです。

   ファンコミュニケーションズは、1999年に現代表取締役の柳澤安慶氏によって創業され、2000年に「A8ネット」を開始。2005年に業界最速で株式公開(JASDAQに上場)後、2014年に東証一部(現プライム)に市場変更しています。

事業環境の激しい変化に翻弄

   それではまず、ファンコミュニケーションズの近年の業績の推移を見てみましょう。

   ファンコミュニケーションズの売上高のピークは2017年12月期の391億円で、そこから徐々に下がり続け、2022年12月期には「前期比71.2%減」の77億円という急激な落ち込みとなっています。

   ただし、この激減は「収益認識に関する会計基準」の適用によるもの。従来は収益を「顧客から受け取る対価の総額」で認識していたものを、この期からは変更。「代理人取引」と判断したものについては、顧客から受け取る額から財またはサービスの仕入先等に支払う額を控除した「純額」で認識する方法になっています。

   なお、2021年12月期までの「売上高」に相当する2022年12月期の「取扱高」は281億5300万円で、前期を上回っています。

   とはいえ、他の要因での減収があるのも事実です。2018年12月期の決算短信には「ITPへの対応や検索アルゴリズムの変更、アドフラウド対策の実行により当初の見込みほど伸びず」と書かれています。

   「ITP」とはApple社が提供するSafariブラウザにおいてCookieを規制してトラッキング(追跡)を防止する機能を指し、「アドフラウド」とは無効なインプレッションやクリックによって成約件数を不正に水増しする広告詐欺を指します。

   2021年12月期の決算短信では、コロナ禍の影響による一部広告主の予算削減や、消費者の消費に至る導線の変化等の影響が、減収要因とされています。

   2022年12月期の決算短信には「改正個人情報保護法への対応」が減収要因に加わっています。アフィリエイト運営者からECサイト運営者に情報が共有されることで個人情報と突合できる場合、「個人関連情報」を得ていると解釈されるようになり、取得同意の確認義務が新たに発生するようになりました。

   この改正法対応で、新規顧客の受注および一部広告主の稼働遅延などもあり、稼働広告主数が減少。売上高の減少につながったということです。このようにASP事業を取り巻く環境は、さまざまな要因により変化しています。

   2023年12月期の業績予想は、売上高が前期比3.0%増の79億7000万円、営業利益が同5.5%増の25億4000万円、営業利益率は31.9%と大幅に改善される見込みです。

成果報酬型広告事業が売上利益を支える

   ファンコミュニケーションズは「CPAソリューション事業」「ADコミュニケーション事業」「その他」の3つのセグメントで事業を展開しています。

   「CPAソリューション事業」は、アフィリエイト広告サービス「A8.net(エーハチネット)」の運営と、スマートフォンアプリ向けCPI広告サービス「seedApp(シードアップ)」の運営を行っています。

   CPAとは「Cost Per Action」の略で成果報酬型広告、CPI広告とはアプリのインストールに応じて収益が発生する広告商品を指します。

   「ADコミュニケーション事業」は、スマートフォン向け運用型広告サービス「nend(ネンド)」の運営を行っており、「その他」はメディア事業等の運営、具体的には「SeeSaaブログ」などを運営するシーサー(2017年6月に買収、子会社化)を指します。

   2022年12月期のセグメント別売上高構成比は、CPAソリューション事業が60.3億円で全体の77.9%と大半を占めています。ADコミュニケーション事業は12.5億円で16.2%、その他は4.6億円で5.9%でした。

   同セグメント損益(調整前)は、CPAソリューション事業が34.8億円と唯一の黒字事業で、ADコミュニケーション事業は1.6億円の赤字、その他も8900万円の赤字でした。

平均年齢33歳、平均年収504万円

   ファンコミュニケーションズの連結従業員数は、2018年12月期の431人から、449人→459人→482人と徐々に増加しており、2022年12月期は490人となりました。ここ数期は、CPAソリューション事業は増加、ADコミュニケーション事業は減少しています。

   単体従業員数も連結同様、372人→382人→400人→422人と一貫して増加し続け、2022年12月期は426人となっています。

   ファンコミュニケーションズの平均年間給与(単体)は、2020年12月期に451万円まで落ち込みましたが、翌期には500万円台を回復して2022年12月期は504万円、平均年齢33.1歳、平均勤続年数5.1年です。

   ファンコミュニケーションズの採用サイトを見ると、新卒採用のほか、カスタマーサクセスやインフラエンジニア、インサイドセールス、事業開発など20種類以上の職種で中途採用の募集が行われています。事業開発職の想定年収は500~800万円と記載されています。

脱アドネットワークで「プロシューマー支援」目指す

   ファンコミュニケーションズの株価は、東証一部に市場変更を果たした2014年3月に2400円台まで上昇しましたが、その後下落し、2020年からは300~400円台を推移しています。

   ファンコミュニケーションズは経営ビジョンに「プロシューマー・ハピネス」を掲げています。プロシューマーとは、生産者(プロデューサー)と消費者(コンシューマー)を合わせた造語で、消費者でありながら生産にも関わる人々を指します。

   日本でアマゾンが2000年にアソシエイト・プログラムを開始し、ブログが2002年ごろから急速に普及して20年あまり。その間には、SNSで多くのフォロワーを集めるインフルエンサーや、配信によって大きな収入を得るYouTuberといった新しい個人の登場もありました。

   近年の業界は、GAFAなどのプラットフォーマーによる市場の寡占化や、参入プレイヤーの飽和が進んでいます。それでもファンコミュニケーションズは方針の変更は行わず、むしろ『これからいよいよ本当の意味での「プロシューマー時代が到来する」』と企業サイトに掲げています。

   2022年12月期 決算説明資料には「アドネットワーク・プロバイダーから、プロシューマー支援企業へ」という言葉も見えますが、それを実現するためには、新規事業の開発と育成が大きな課題となることでしょう。(こたつ経営研究所)

こたつ経営研究会
こたつ経営研究会
有価証券報告書や決算説明書などの公開情報を分析し、会社の内情に思いをめぐらすニューノーマルな引きこもり。昼間は在宅勤務のサラリーマンをしながらデイトレード、夜はネットゲームをしたりこたつ記事を書いたりしている。好きなピアニストはグレン・グールド。嫌いな言葉は「スクープは足で稼げ」。
姉妹サイト