若き稲葉NHK会長、総理を相手に犯した大失敗エピソード
「心配を恐れず、チャレンジしろ」とエールを贈る社長が多かったが、実際に具体的な体験談を語る人は稀だった。そんななか、元日銀マンの稲葉延雄NHK会長は自らの失敗談を赤裸々に語った。
「恥ずかしいですが、私の失敗談を1つ、ご紹介します。日銀時代に、総理大臣官邸で日銀総裁が出席する会議に同行して、議事録を取るという仕事を任されたことがありました。朝食の時間帯に会議が開かれる予定だったのですが、会議の前日に上司から急ぎの仕事を命じられました」
「必死に取り組み、夜遅くに終わらせて満足して帰宅したのですが、そのせいか次の日の朝、いつも通り日銀本店の自分のオフィスに行ってしまったのです。日銀に着いてから、官邸の会議に行くのを完全に忘れていたことに気が付きましたが、当時は携帯電話もないので総裁に連絡のしようもありません。これはもう辞職ものだと自席でひどく落ち込んでいたら、後ろからポンポンと肩を叩かれました」
「気が付くと総裁が後ろに立っていて、『君の代わりにメモをとっておいたよ』と議事録を渡されました。私の代わりに、総裁自らメモを取ってくれていたのです。怒られなかった分、余計に深く反省して二度と同じ失敗をしないようにしようと心に固く誓った記憶があります」
そして、こう結んだ。
「多少の失敗をしても気にしすぎる必要はありません。必ずフォローをしてくれる人がいるはずです。そして、失敗したときは、同じことを繰り返さないようにすることが肝心です。とはいえ、世の中そう簡単ではなく、たいていの場合2回目の失敗をしてしまうものです。どうすればよいかというと、その時3回目はもう決してしないと、気持ちを強く引き締めることです」
エアコンメーカーのダイキン工業(大阪市)の十河政則社長は、エアコンのように温かい言葉で励ました。
「皆さんはダイキンの成長・発展の『原石』ともいえる人材です。皆さんには、常に挑み続ける人『チャレンジャー』であり、新しい風を吹き込む人であってほしいと思います。当社は出る杭を認め、前向きな失敗はとがめない社風を誇りにしています」