発言力強める「グローバルサウス」とは?
「週刊エコノミスト」(2023年4月11日号)の特集は、「世界経済入門2023」。「グローバルサウス」と呼ばれる新興国、途上国が世界経済の中で発言力を強めている実情をまとめている。
グローバルサウスの代弁者として、新しい世界秩序の構築をもくろんでいるのが、中国とインドの2大国だという。グローバルサウスにとって、喫緊の課題はエネルギーと食糧価格の高騰だ。
グローバルサウスの国々は、一国の主権を侵害するロシアの行為を容認していないが、世界最大級のエネルギー、肥料供給国であるロシアが世界経済から分断されることも望んでいない。そこで、ロシアと友好関係にあると同時に西側諸国にも影響力を及ぼすことが可能な中国とインドに新興国の期待が集まることになる、と指摘している。
同誌が国際通貨基金(IMF)の統計から作成した、購買力平価(PPP)で見た国内総生産(GDP)の世界トップ20のグラフを見ると、G7を押しのけて、新興国・途上国がトップ20に食い込む様子が一目瞭然に分かる。
PPPベースのGDPはより実体経済に近い指標とされ、22年では中国が米国を抜いて1位に、3位のインドは4位の日本を金額で倍近く引き離している。
アフリカには「一帯一路」構想を掲げる中国が進出。大規模な借款と複数のインフラプロジェクトを全土で進めている。
ロシアによるウクライナ侵攻以降、食料や肥料、燃料価格高騰により、アフリカ各地で食料危機が発生。中国からの債務問題が浮上すると、政治的な危機につながりかねない。
その中国も、高成長を追い、膨大な借金で投資を続けてきたツケが出てきた。日本国際問題研究所客員研究員の津上俊哉氏は「表向きの安定は保たれるが、富の配分がゆがみ、成長は停滞するだろう」と見ている。
このほか、まもなく「新G7」中核国になるインドネシア、世界の再エネ輸出拠点になる中東諸国などと対照的に、インフレに苦しむ欧州諸国、ベンチャー起業ラッシュの韓国、経済制裁の効果が見られないロシアの現状をレポートしている。
最大の関心事である米国経済については、「金融不安は中小銀行に限定。景気は来年春先から回復へ」としながらも、国際政治の求心力低下は避けられないようだ。
ウクライナ戦争は、欧米・日本とロシア・中国のほかに、グローバルサウスという第三極が台頭する新たな局面を招いたようだ。(渡辺淳悦)