日銀総裁の交代は、「住宅ローン金利」と「住宅価格」にどう影響するか?...専門家が解説【1】(中山登志朗)

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異次元金融緩和下で、住宅ローン金利は低下し、住宅価格は上昇し続けた

   日銀の異次元緩和によって、2014年くらいから、住宅を購入し長期のローンを組むには絶好の環境が到来したことになります。

   住宅市場はリーマン・ショックによるミニバブル崩壊で失った勢いを短期間で取り戻し、2007年以降下落していた新築マンション分譲価格も、2013年には東京都平均で5,290万円と大台を突破。さらに、2016年には6,038万円、2022年には7,521万円に達しました。

   つまり、この10年で2,000万円以上も価格が上昇したことになるのですが、これは異次元緩和による住宅ローン金利の低下がもたらしたもの、とほぼ断言することができます。

   物件価格がこれだけ高騰しても、0.3%台の住宅ローンを活用すれば、35年間の毎月の返済額はごくわずかしか増えません。ですから、ある程度の所得者層が購入可能であれば、この低金利を追い風としてハウスメーカーやマンションデベロッパーは、物件を販売し続けることができる状況を日銀が作り出したことになります。

   住宅分譲・流通は、これまで日本の景気を支え続けてきた主要産業の1つです。特に現在は、良質で断熱性能の高い住宅の供給が必要とあって、円安やウクライナ侵攻に端を発するコストプッシュ型の価格上昇が発生しても住宅は作り続けていかなければなりません。そうしないと、2050年に目標設定されたカーボン・ニュートラルの達成には「黄信号」が灯ることになります。

   したがって、植田新総裁は、就任前の会見でも現在の金融緩和策は適切と考えているとの発言があったように、当面は現在の金融緩和政策を踏襲して、消費および所得の拡大による景気の安定的な浮揚を目指す可能性が高いと考えられます。

   ポイントは、この「当面は」がどれくらいの期間なのか。いつ異次元緩和を終了して、「通常の」金融政策に方針を転換するかです。これについては、<日銀総裁の交代は、「住宅ローン金利」と「住宅価格」にどう影響するか?...専門家が解説【2】(中山登志朗)>で説明を続けましょう。(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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