トラック大手、日野自動車の株価が2023年3月30日の東京株式市場で一時、前日終値比14円(2.6%)安の533円まで下落した。
前日の取引終了後、2023年3月期連結決算の業績予想のうち最終損益について、国内向けエンジン不正問題の補償費用がかさむなどとして大幅に下方修正したことで、不正のつけがなお巨額にのぼることが投資家に嫌気され、売りが集まった。
2023年3月期の予想...最終赤字は過去最大1280億円に
業績予想の修正内容を確認しておこう。売上高は従来予想比200億円多い1兆5200億円(前期比4.1%増)、営業利益は従来予想比30億円多い150億円(前期比55.6%減)、経常利益は従来予想比20億円多い10億円(前期比71.0%減)とそれぞれ従来予想を上回る。円安やコスト削減などが進んだことによるものだ。
だが、最終損益については従来予想より赤字幅が730億円拡大し、1280億円の赤字(前期は847億円の赤字)を見込むとした。最終赤字は3期連続で、2023年3月期の赤字額は過去最大。
最終赤字が拡大する要因は、2つの特別損失を計上することによる。
1つは国内市場向けエンジンの認証手続きでの不正行為に起因する、顧客への燃費補償費用で約600億円。大型トラック「プロフィア」や小型バス「リエッセ2」など約20万台について、販売時に顧客に示した燃費と正しい燃費の差から、顧客が受けた損失の一部を補償する。
もう1つは、米国の子会社で工場などの減損処理を行うことによる約150億円。高インフレのもと原材料費が高騰していることなどを踏まえて、固定資産の減損損失を計上する。
4種類の車両が「型式指定」取り消し処分...2割相当が出荷できず 米司法省の調査は継続、罰金の可能性も
日野自動車が燃費や排ガスを巡る不正を公表したのはほぼ1年前の2022年3月。
不正の期間は少なくとも2003年から約20年に及ぶ。排ガスの試験結果を改ざんしたり、燃費の数値を偽装したりしていた。
国土交通省から4種類のトラックやバスについて、量産・販売許可にあたる「型式指定」の取り消し処分を受け、その後型式指定を再取得できたのは1種類。このため今も通常の国内販売の2割相当分を出荷できない状態で、生産の正常化にはなお1年程度かかるとみられている。
日野自動車の時価総額は2023年3月末時点で、不正公表前の半額程度にとどまる。
国内の不正問題に関する費用計上は、今回の特別損失でほぼ終えたとみられる。ただ、「米司法省による調査は継続している。こちらは罰金の有無・多寡を含め不透明感が拭えない」(SMBC日興証券)との見方があり、今後の株価には米国当局の動向が影響しそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)