完全民営化で浮き彫りになった中小企業金融の在り方
しかし、じつは商工中金は沖縄から北海道、果てはニューヨーク支店や、上海や香港、バンコクの駐在員事務所といった海外拠点まで、自前のネットワークを有する。
他の政府系金融機関が融資のみに特化しているなか、預金の受け入れや債券の発行(自ら資金調達が可能)、国際為替、手形を通じた短期金融など、すでに「銀行並み」の幅広い総合金融サービスの提供を可能なのだ。
まだ、ある。商工中金はすでに「銀行並み」の金融機能を有するだけでなく、新たに盛り込まれた地域金融機関、なかでも規模の小さな信用金庫や信用組合との「連携」「補完」する役割もまた、信金・信組の「親」機関である「信金中央金庫」や「全国信用協同組合連合会」(全信組連)が、すでにそのポジションにある。
商工中金に入り込む余地はなく、そうなると、信金・信組にとっては「目の上のタンコブ」であり、信金中金や全信組連に至っては「連携」を求められても困惑するばかり。自身の存在意義すら危うくなりかねない。
ある信用金庫の幹部は、
「取引先の多くは地域金融機関とほぼ同じ。預金に融資、海外支店まで持っているのに、『銀行並み』などとワケがわからない。(業務範囲が広いので)考えようによっては、ゆうちょ銀行並みの巨大な金融機関がもう一つできるのだから、われわれと組もうとか、そんなことをしようものなら、『軒先貸して母屋まで』とられかねない」
と、戦々恐々だ。
官と民の2つの顔を持つ商工中金の完全民営化で浮き彫りになったのは、中小企業向け金融の在り方であり、多すぎる担い手の存在にある。