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悩める人事担当者、Z世代の採用に「価値観の変化感じる」...それなら、WBC栗山英樹監督の「コミュ力」に学んでは!

   日本のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)優勝で、栗山英樹監督の若手選手の「育成術」が話題になるなか、企業の人事担当者はZ世代(10代半ば~25歳ぐらい)の採用や新入社員の受け入れに頭を痛めているようだ。

   就職情報サービスの学情(東京都千代田区)が、企業・団体の人事担当者を対象に、「Z世代の採用」について調査したところ、「他の世代と違い、価値観の変化を感じる」と答えた企業が6割に迫ることがわかった。2023年3月23日の発表。

「希望する部署に配属されるかを意識する学生が増えている」
「自身が成長できるかを重視し仕事選びをする学生が増えている」

   このような「自律的なキャリア形成」への関心の高まりを指摘する声が寄せられたという。

「キャリアの自律」への関心高まる

   変化が激しく、あらやるものを取り巻く環境が複雑かつ曖昧で将来の予測が困難な状態をいう「VUCA」の時代と呼ばれる現在、働く人による主体的なキャリア形成への関心が高まっている。特にZ世代は「キャリアの自律」への関心が高いといわれる。

   Z世代の採用や新入社員の受け入れ時に、企業はどのような変化を感じているのだろうか――。

   調査によると、Z世代の採用や新入社員の受け入れで、「他の世代との違い、価値観の変化を感じる」と回答した企業が58.0%(「感じることがある」24.5%と「どちらかと言えば感じることがある」33.5%の合計)にのぼった。【図1参照】

   企業の人事担当者からは、

「自身のキャリア形成や、ジョブローテーションの制度を意識」する学生が増えている」
「仕事選びにおいて、自身の成長の優先順位が高くなっていると感じる」
「就職活動において『ファーストキャリア』という言葉を使う学生が増えていると感じる」
「転職も視野に、新卒で入社をする企業を選ぶ学生も増えていると感じる」
「『自分だから提供できる価値』を重視する学生が増えている」
「志望動機で、社会に貢献したい、他者の役に立ちたいという話をする学生が増えている」
「『やりたいこと』や『経験したいこと』『身に付けたいスキル』が明確な学生が増えていると思う」
「デジタルツールの活用に長けており、納得いくまで情報収集をしてから決断したいと考える学生が増えている」

といった「自律的なキャリア形成」への関心の高まりを指摘する声が寄せられた。

図1 Z世代の採用や新入社員の受け入れで、「他の世代との違い、価値観の変化を感じる」と回答した企業は58.0%(学情調べ)
図1 Z世代の採用や新入社員の受け入れで、「他の世代との違い、価値観の変化を感じる」と回答した企業は58.0%(学情調べ)

「研修制度」や「給与体系」を変更

   こうした若い世代の価値観の変化や「キャリアの自律」への関心の高まりを受けて、新入社員の受け入れ方法や人事制度を「変更した」と答えた企業は14.4%だった。

   「変更はしていないが、変更を検討している」と回答した企業は42.5%にのぼり、半数以上の企業が「変更」または「変更を検討している」ことがわかった。【図2参照】

図2 「キャリアの自律」への関心の高まりを受けて、14.4%の企業が人事制度を変更。変更を検討する企業も4割超
図2 「キャリアの自律」への関心の高まりを受けて、14.4%の企業が人事制度を変更。変更を検討する企業も4割超

   また、新入社員の受け入れ方法や人事制度について、「変更したこと、変更を検討している」ことを具体的に聞いたところ、57.9%の人が「研修制度」と答え、最多。次いで「給与体系」の42.1%、「上司と部下のコミュニケーション方法」が41.6%で続いた。【図3参照】

   企業から寄せられた声をみると、研修制度では、

「自身の人生について考える研修を新たに実施するようになった」
「若手向け、管理職向け、経営者向けなど階層別の研修の充実を図っている」
「OJTでの研修でも、学ぶべきポイントを整理するなど教育項目の体系化を進めている」

といった意見が集まった。一方、給与体系や評価制度をみると、

「年功序列型の給与体系から、個人の業績・成果に連動する給与体系に変更した」
「スキルや個人の業績を評価する制度を導入」
「人事評価の項目を刷新した」

といった声があった。また、上司と部下のコミュニケーション方法では、

「1on1(ミーティング)を実施するようになった」
「部下とのコミュニケーション方法を学ぶ、管理職研修を実施」

という意見。そして、配属方法では、

「勤務地やコースを選択できるようにした」
「初期配属を確約する採用枠を新設した」
「社員のキャリアの意向を調査し配属・異動に反映している」

といった声が寄せられた。

図3 最多は「研修制度」の57.9%、次いで「給与体系」の42.1%(学情調べ)
図3 最多は「研修制度」の57.9%、次いで「給与体系」の42.1%(学情調べ)

栗山監督のコミュ力を引き出す「ピグマリオン効果」

   その一方で、若手選手が活躍したWBCで見せた栗山英樹監督の選手との「コミュニケーション術」が、経営幹部や人事担当者に大いに参考になると話題だ。「栗山イズム」といわれる、栗山監督の選手掌握術である。

   連日、テレビのワイドショーで取り上げられる、そのコミュニケーション術で驚かされたのは、栗山監督と選手とのコミュニケーションの量と、多くの選手と直接、一対一で話をするというコミュニケーションを大切にする姿勢にある。

   一般的に、組織における上下関係でのコミュニケーションは、一方的に上司が指示するだけだが、その量が多いだけでは必ずしもうまく機能しない。

   上下関係のコミュニケーションは、量だけではなく、その中身――つまり「接し方」が重要である。このことは、漏れ聞こえてくるWBCの栗山監督の見せた姿や、談話や映像に改めて思い知らされるばかりだった。

   そのコミュニケーション力の源泉が、「信じる力」であると思われる。選手を信じ、期待感を伝える続けるコミュニケーションが生みだす力だ。

   これは教育心理学でいう「ピグマリオン効果」で、人はある特定の人に期待感を伝え続けていると、その人は期待に沿うようになるというものだ。

   思えば栗山監督は、日本ハムファイターズに入団したばかりで、多くの人がまだ否定していた「二刀流」の大谷翔平選手を誰よりも「応援」して、新しい時代のヒーローを育て上げた張本人。

   WBCでは、大一番のプレッシャーで不振にあえぐ若手の成長株でZ世代の村上宗隆選手(ヤクルト)を信じ抜いて起用し続けたからこそ、若き主砲に劇的なサヨナラヒットを「打たせた」といっても過言ではない。

   おそらく若者のあいだでは、いまや「上司にしたい人NO.1」であろう栗山監督。そんな栗山監督に学ぶ「信じる力」を見習って、取り入れてみてはどうだろうか。Z世代との「教理」が縮まるかもしれない?

   なお、学情の調査は企業・団体の人事担当者を対象に、2023年2月20日~28日に実施。有効回答数は、612件だった。