楽天銀行、東証プライム市場に新規上場へ...グループの財務改善がねらいか 立て直し急務の「赤字垂れ流し」携帯電話事業に「伸び代」は?

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   楽天グループ(楽天G)傘下の楽天銀行が、東京証券取引所のプライム市場に新規上場することが決まった。上場日は2023年4月21日で、想定発行価格に基づく上場時の時価総額は3000億円規模になる。

   楽天銀行の成長戦略もさることながら、携帯電話事業「楽天モバイル」の赤字垂れ流しで悪化した楽天Gの財務立て直しの一環という狙いが大きい。ただ、楽天Gが今後も発展していくためには、やはり携帯事業の反転が必要だ。

  • 楽天銀行が東証プライム市場に新規上場へ
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想定仮条件は仲値1795円で、楽天Gは968億円得る

   3月22日、東京証券取引所が上場承認を発表した。想定仮条件は1630~1960円(仲値1795円)で、仮条件は4月5日に決定する。

   楽天Gは上場にあたり保有株の3割強にあたる5395万株を売り出し、仲値で計算して968億円を得る。これとは別に楽天銀行は上場時に555万株の新株を発行、さらに需要状況を見ながら追加で446万株を売却するとしており、その場合の楽天Gの保有比率は63.33%まで低下するが、上場後も連結子会社を維持する。

   楽天銀行は2001年に開業したイーバンク銀行が前身で、2009年に楽天(現・楽天G)の子会社になった。2023年2月時点の口座数は1300万を超え、預金残高は8兆9000億円規模と、いずれもネット銀行で最大だ。インターネット通販(EC)を軸に、証券、カードなどを含めた「楽天経済圏」の強みを生かし、個人顧客を広げている。

   楽天銀行は上場について、「自律的な経営視点を持ちながら成長戦略を遂行し、また、独自の資金調達を含めた様々な成長及び財務戦略を可能とすることを目指している」と説明している。

携帯事業の重荷は、先行投資した累計1兆円規模の基地局整備

   ただ、楽天銀行自身の成長もさることながら、今回の上場が楽天Gの財務改善を最大の狙いとしているのは、多くが知るところだ。

   楽天Gの2022年12月期連結決算は、売上高こそECや金融事業の好調で1兆9278億円(前年同期比14.6%増)と、過去最大になったが、営業損益は3638億円の赤字(前期は1947億円の赤字、)最終(当期)損益も3728億円の赤字(同1338億円の赤字)。4期連続最終赤字という厳しい数字になった。

   全体の足を引っ張ったのが携帯電話事業で、同事業の営業損益は4928億円の赤字と、前期の4211億円からさらに悪化した。

   携帯事業が抱える最大の重荷が累計1兆円規模になる基地局整備などの先行投資だ。

   主に借り入れや社債発行で賄った結果、金融事業を除く楽天Gの有利子負債は22年12月末に約1兆7607億円に達した。携帯に本格参入する前の20年3月末(9854億円)から79%増えている。

米格付け会社、楽天の長期発行体格付け1段引き下げ 今後の見通しも「ネガティブ」

   状況の厳しさはもちろん、楽天Gもわかっている。

   23年2月14日の決算発表の場で、三木谷浩史会長兼社長は、「(財務状況を改善するため)楽天銀行や楽天証券の株式上場準備を進めていく」と述べるとともに、他社からの出資受け入れなども含めて「戦略的業務提携や外部資本の活用も柔軟に検討したい」と語った。

   J-CAST 会社ウォッチが「加速するメガバンク×ネット証券大手の連携...ただし、主導権はネット大手側にある裏事情」(2022年10月25日付)でも報じたように、みずほファイナンシャルグループ(FG)から楽天証券ホールディングス(HD)に約2割出資を受けたが、これも楽天Gが保有株を売却して775億円を得たという財務改善の一環。これに続く楽天銀行の上場は、当初の22年中の目標が遅れた。

   この間、米格付け会社のS&Pグローバルは22年12月に楽天の長期発行体格付けを「BB(ダブルB)プラス」から「BB」に1段引き下げ、今後の見通しも「ネガティブ」とした。

   「BBプラス」以下は投機的水準にあたるから、楽天Gには厳しい評価だ。

   実際、23年1月に内外で起債したが、ドル建て無担保優先債4.5億ドル(約590億円)の最終利回り負担は12%にもなる。国内の個人向け普通社債2500億円も利率は3.3%と高い。

「0円プラン」廃止で収益改善も、目標の1200万契約へは前途多難 カギは「楽天経済圏」の相乗効果

   肝心の携帯事業について三木谷社長は「設備投資は一巡しつつある」と話すが、23年12月期も前期とほぼ同水準の3000億円規模(24年12月期は1500億円規模)を見込む。

   データ使用量が月1GBまで無料という「0円プラン」の廃止(22年5月発表)で契約は減少したものの、1契約当たりの収入は増加し、収益は一定程度改善した。人件費などの経費削減にも努めている。

   だが、投資がいずれ一巡しても、契約数(22年12月末で449万)を増やす以外に、携帯事業の黒字化はない。足元では「0円」廃止の影響が薄れ、純増に転じてきているというが、目標の1200万契約に向けた道筋はなかなか描けない。

   もっとも、大手間の競争で重要な「通信の質」では、つながりやすい周波数帯「プラチナバンド」の利用開始を24年3月と見込んでおり、実現すれば追い風にはなる。しかし、携帯の契約を伸ばすうえでは、やはりECなどと組み合わせ、楽天ポイントを武器にした「楽天経済圏」の相乗効果がカギを握る。

   22年10~12月の楽天Gのさまざまなサービスを月に1回でも利用した人は前年同期比11%増の3900万人いた。そして、このうち楽天モバイル契約者は12%程度にとどまるといい、ここが、いわば「伸びしろ」になる。

   子会社株の上場を含め財務改善に努めることはもちろん重要だが、経済圏の魅力をさらに高めていけるかが、楽天Gの将来を決める。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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