シリーズ連載中の「俯瞰して見る日本」。第6回は、住まいの関連について持ち家比率と住宅の面積、民間住宅の家賃、さらには空き家比率を取り上げ、住宅事情を見てみたい。
住宅に占める一戸建て比率...1位秋田県、最下位東京都
2018年度の人が住んでいる住宅に占める一戸建ての比率を見ると、1位は秋田県の79.8%、2位は山形県の77.6%となっており、地方の人口減少県が多くランキング入りしている。
ただ、群馬県や山梨県もベスト10入りしており、必ずしも、過疎化が進んでいる県だけではないといえそうだ。東京都に比較的に近い県では、東京都と東京都に隣接する県よりも地価がはるかに低いことで、一戸建て意欲が強いことがうかがわれる。
一方で、下位10には東京都、大阪府など大都市を抱える都道府県がランキング入りしている。東京都は26.8%と住宅に占める一戸建て比率が低く、秋田県は住宅の8割が一戸建てなのに対して、東京都は3割に満たない。比率の低さには、明らかに地価の高さが関係している。
また、全国平均は53.6%でこれを下回っているのは、下位9位の千葉県までなので、これら9都道府県が全体の比率を大きく引き下げていることは明らかだ。
例外的なのは、下位2位に入っている沖縄県で、沖縄県の場合には所得水準の低さ(全国で1番低い)が大きく影響している。(表1)
持ち家の延べ面積、最も広いのは富山県...東京都のおよそ倍 全国平均上回るのは上位35位まで
それでは、持ち家の大きさにはどれくらいの差があるのだろうか。
2018年度の持ち家の延べ面積(建築物各階の床面積の合計)を見ると、最も家が広いのは富山県の171.8平方メートルで、東京都の93.3平方メートルと比べると、おおよそ倍の広さとなっている。
上位10の顔ぶれは、やはり人口減少が進んでいる県が多く、下位10は大都市を抱える都府県が入っている。
住宅に占める一戸建て比率との関連を見ると、上位10には一戸建て比率上位10のうち、秋田県、山形県、富山県、福井県、青森県、新潟県の6県が入っている。
一方、下位10には一戸建て比率の下位10のうち、東京都、沖縄県、大阪府、神奈川県、福岡県、兵庫県、千葉県、埼玉県の1都1府6県が入っており、両者の間には、非常に強い関連性があることがわかる。(表2)
ただ、持ち家の延べ面積の全国平均は119.9平方メートルで、上位35位の広島県までが平均を上回っていることから、下位10に入っている都府県、特に東京都と神奈川県の持ち家が、圧倒的に狭いといえそうだ。
となれば、▽一戸建て比率が低く、▽持ち家の延べ面積が狭い、▽大都市を抱え、▽地価が高い都府県では、民間賃貸住宅の家賃が高い。かたや、▽一戸建て比率が高く、▽持ち家の延べ面積が広い、▽過疎化が進み、▽地価が低い県では、家賃が低いと考えられる。
民間賃貸住宅1か月1坪当たりの家賃...東京都8795円、最安の青森県と比べて3倍近い差
そこで、2021年度の民間賃貸住宅の1か月1坪当たりの家賃を見ると、東京都が突出して高く、8795円となっており、2位の神奈川県よりも2000円以上も高い。最も安い青森県の3122円と比べると、東京都は3倍近い家賃となっている。
家賃の上位10を見ると、やはり一戸建て比率の下位10に入っている東京都、大阪府、神奈川県、兵庫県、千葉県、埼玉県の1都1府4県が入っており、地価の影響を大きく受けていることがわかる。(表3)
ただ、家賃の下位10では一戸建て比率の上位10のうち、青森県と群馬県しか入っておらず、家賃の上位10に入る都府県を除けば、それ以外では家賃水準には大きな差は見られない。
さて、住まいで近年大きな問題となっているのが、空き家だ。そこで、最後に、2018年度の総住宅数当たりの空き家比率を取り上げる。
空き家比率の1位は山梨県の21.3%、次いで和歌山県の20.3%となっている。上位10に入っている県では、おおよそ10軒に2軒が空き家となっている状態だ。
最も空き家比率が低いのは埼玉県の10.2%で、確かに一戸建て比率が下位10のうち、空き家比率が下位10に入っているのは、東京都、沖縄県、神奈川県、福岡県、愛知県、千葉県、埼玉県と7都県もあり、人口の多い、地価の高い都県では空き家比率が低いといえそうだ。
ところが、空き家比率の全国平均は13.6%で、平均を下回っているのが14都府県しかないことを考えれば、多くの道府県で空き家の発生が問題となっていることに変わりはない。(表4)
さて、シリーズで連載してきた「俯瞰して見る日本」も、次の第7回で取り上げる医療関連が最後となる。【第7回につづく】