「明日この世がなくなってしまっても、僕は今日もリンゴの木を植える」
「人のために尽くす仕事」とはどう行うべきか。優れた医療福祉スタッフの育成を使命にする新潟医療福祉大学の西澤正豊(にしざわ・まさとよ)学長は、「共感できる能力」から話し始めた。
「優れたQOL(生活の質)サポーターとなるためには、他者に共感できる能力が必要です。誰かの役に立とうと志す背景には、その人のことを気遣い、慮(おもんばか)る気持ちが存在するのです。このように他者を気遣うことを『他を利する』と書いて利他といいます」
「利他主義は、フランスのオーギュスト・コントが利己主義エゴイズムに対峙する概念として19世紀半ばに定義したとされています。わが国では、もともと仏教用語である『利他』と訳したのです。ということは、わが国ではコントが定義する1000も前から、利他という考えが存在してきたことになります」
「利他」には2つの考えがあった。天台宗を開いた最澄は「忘己利他」と教えた。「己を忘れて、他を利する」、つまり他を利するために、まず己を控える自己犠牲が求めたのだ。
しかし、真言宗を開いた弘法大師空海は「自利利他」と唱え、自らを利すること、すなわち自己を深めることと、他者を救済することは1つだと教えた。
そこから西澤学長はこう語った。
「自他ともに、一体として成就されるというのです。自分を大切にできない人は、他者を大切にすることもできないことになります。己を忘れるという利他主義に否定的な人たちも、これならば受け入れやすいと思います」
「クライアントを気遣うことは、自分にとっても喜びとなり、自己実現を果たすことに繋がります」
楽しみながら、人のために役に立とうと呼びかけたのだ。西澤学長は最後に、こんな「はなむけの言葉」を贈った。
「明日この世がなくなってしまうとしても、僕は今日もリンゴの木を植える」
(福田和郎)
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