ダ・ヴィンチはなぜキツツキの舌を描こうとしたのか
AIに対抗するためだろうか、人類が生んだ巨大な天才を持ちだしたのは、愛知東邦大学の鵜飼裕之(うかい・ひろゆき)学長だ。レオナルド・ダ・ヴィンチである。
「はじめに、1つの言葉を紹介しましょう。『キツツキの舌を描写せよ』。レオナルド・ダ・ヴィンチが残したとされる言葉です。芸術家にして科学者、そして技術者にして軍事戦略家でもあった稀代の天才ダ・ヴィンチは、その生涯において膨大なメモを残しています。そのなかの『やることリスト』の1つがこの言葉と言われています」
なぜ、ダ・ヴィンチはキツツキの舌に興味を持ったのか。キツツキは1秒間に平均20回、1日に1万2000回も木をつつくと言われる。そのとき、脳には1000G以上もの力が加わるのに、脳震盪(のうしんとう)を起こさない。
「ダ・ヴィンチの好奇心は、この『なぜ?』に向かいました。ダ・ヴィンチがその理由を調べたかどうかは分かりませんが、キツツキの舌は頭頂から一周して舌骨にぴったりとフィットし、まるでシートベルトのように頭を打ち付ける際の衝撃を吸収して守るからだと言われています」
「その他にもさまざまな現象に興味を持ち、詳細に調べ、その様子をスケッチやメモに残しています。とくに、人間の身体の持つ美しさ・神秘を解き明かすために描いた人体解剖図は数多く残されており、後世の医学者はその正確さに驚嘆したそうです」
「ダ・ヴィンチは、溢れる『好奇心』に突き動かされ、さまざまな分野を飽くなき『探究心』をもって追求しました。それは、「モナリザ」の微笑みの中に万人を引き付ける謎となって後世の人々を引き付け、そして近代科学の誕生につながる様々な発想へと繋がっていきました」
そして、卒業生をこう励ました。
「AI万能が予想される時代、AIが人間を超える『シンギュラリティ』がまことしやかに喧伝されるなかにあって、人間にしか備わっていない『好奇心と探求心』。皆さんに、いつまでも身にまとっていただきたい心です」