「Entertainment. It's everything. みんなを生きるな。自分を生きよう」
チャットGPTの出現を心の底から喜んだのは、デジタルスキルを学ぶ専門大学「デジタルハリウッド大学」(東京都千代田区)の杉山知之(すぎやま・ともゆき)学長だ。杉山学長の卒業生に対する呼びかけは、大学の使命のうえからも当然のことながら、「AI賛歌」に満ちたものだった。
「人工知能が絵を描き始めました。ベースとなるビッグデータは、この四半世紀に人々がネットにアップし続けた画像たちです。半年もすると、AIが描く絵画は芸術的価値を論じるべきレベルにまで成長していきました。そこに現れたのがチャットGPTです。自然言語で、AIとやりとりができるプラットフォームは、広大なネット空間に置かれている、膨大な情報を深く学習し、我々の問いに対する適切な答えを、個々に、無限に、与えてくれるのです」
「このことは、世界トップクラスのコンピュータサイエンスの研究者たちからも、驚きを持って迎えられています。シンギュラリティは目の前となりました」
「もう1つ忘れてはいけないことは、民間企業開発のロケットが、地球と宇宙空間を往復し始めたことです。これまでは捨てられて、燃え尽きるしかなかった巨大な第一段ロケットが、逆噴射しながら地表に垂直に降り立つ姿は、まさにサイエンスフィクションがリアルになった瞬間でした。スペースX社の偉業をたたえずにはいられません。多惑星種としての人類の未来が始まったとも言えるでしょう」
先端技術と科学に対する、あふれるばかりの感動の言葉が続いた。
「一方、本学では、もう1つ宇宙であるメタバースの利用が自主的に広がり、多くの学生が自分のアバターを持つようにもなりました。いやはや、盛りだくさんです。一昔前なら、人生で一度経験するような出来事ばかりですね。これだけのことが在学期間中に起きるとは、奇跡と言えるでしょう。これらの事実を、これからどう生かすか、みなさんの判断に委ねられているのです」
「21世紀のすべての変革のキーは、デジタルテクノロジーであり、そこに繰り広げられる、人と人のコミュニケーション、人と機械とのコミュニケーション、機械と機械のコミュニュケーション、さらに、地球に存在するものすべてとのコミュニケーションが、未来を創っていくのです」
同大学では、卒業証書も紙と同時に、NFT(非代替性トークン)でのデジタルの証書を発行した。
最後に杉山学長はこうエールを贈った。
「今日は、みなさんとの別れの日ではありません。新たな関係が始まる日なのです。
Entertainment. It's everything.
みんなを生きるな。自分を生きよう。
みなさんの未来に栄えあれ!」