働き方改革がうまくいっている企業では、「業績」や「顧客満足度」「従業員満足度」が向上したというポジティブな影響が確認できたことが、株式会社ワーク・ライフバランスの「企業の働き方改革に関する実態調査2022年版」でわかった。2023年3月14日の発表。
今回の調査では、昨年度までのコロナ禍での働き方への影響を踏まえ、改めて働き方改革の取り組み状況と、2022年4月の育児・介護休業法改正後の男性の育児休業取得や勤務間インターバル制度に関する捉え方についても調査した。
調査は全国の20歳~70歳の男女を対象に、2022年12月13日~23年1月28日にインターネットで実施。有効回答数は、事前調査時に2201件、本調査では330件だった。
調査対象者の41.6%が「働き方改革がうまくいっている」
調査によると、「働き方改革がうまくいっている企業の成果」を聞いたところ、64.6%の人が「業績が向上した」と答え、最も多かった。
次いで、「従業員満足度が向上した」が63.0%。「顧客満足度が向上した」の60.5%、「株価などの企業価値が向上した」の59.0%などが続き、経営指標へのポジティブな影響が確認された。【図1参照】
この調査の対象者のうち、41.6%が「働き方改革がうまくいっている」と回答。それらの企業の成果は「業績が向上した」(64.6%)、「従業員満足度が向上した」(63.0%)、「株価などの企業価値が向上した」(59.0%)などが上位を占めた。
「働き方改革がうまくいっている」と答えた企業は、2020年度の調査から3年連続で「働き方改革が思うように進んでいない」と回答する企業を上回り、働き方改革の推進とその効果に対する実感が伴っていることがうかがえる。
さらに、働き方改革による業績への好影響についても、前回調査の2021年度と比べて 5%上昇しており、単なる福利厚生を期待した働き方改革ではなく、企業の経営指標にもポジティブな影響を及ぼすことが確認された。
今後、さらに働き方改革に関する取り組みへの期待感が高まっていくことが予想される。
また、「働き方改革がうまくいっている」と答えた企業が実施する取り組みを調べたところ、66.7%が「オフィスの改修や在宅勤務制度、通勤手当など勤務環境の改善」と答えた。次いで、「部門間の連携を強化する取り組み」(58.6%)や「勤務時間インターバル制度の導入」(58.0%)などが上位となった。 【図2参照】
働き方改革「思うように進まない」原因は?
その一方で、働き方改革が思うように進まない企業の取り組みは、43.2%の人が「勤怠管理の強化」と回答。次いで、「効率性向上のためのITツールの新規導入」(42.9%)や「ノー残業デーや定時退社の促進」(39.8%)などとなった。
ワーク・ライフバランスは、
「表面的な対策にとどまっていることがうまく進まない原因であると考えられる」
とみている。【図3参照】
働き方改革が思うように進まない原因をみると、「残業削減以外の施策を実施していない」が26.2%、「思い付きの施策の実施にとどまること」の24.5%などがあがった。
このことから、経営陣が本気で社員とともに勤務環境の改善などの根本的な働き方改革に取り組むことが必要で、結果ばかりを求めるのではなくその達成方法も合わせて議論を進めていくことが重要であると考えられるという。
また、「発注者からの要求に対応せざるを得ない」(22.3%)や「取引先の理解を得られない」(5.2%)という回答もあり、商習慣の変革などにおいても経営陣の役割の必要性が示唆された。【図4参照】
男性の育休増える! 同僚の取得に「賛成」は75.7%
調査では、勤務間インターバル制度に関する捉え方についても聞いた。
「勤務間インターバル制度を導入している」と答えた人は30.6%。そのうち、制度の導入時に必要な仕組みとして、「チーム内での仕事の配分の見直し」(48.5%)や「勤務開始・終了時刻を効率的に把握する仕組みの導入」(42.4%)、「働き時間は有限であるとの考え方に基づいた仕事の効率化」(31.8%)、「勤務間インターバル導入を組織のメッセージとして対外的に公表しお客様などに理解いただくこと」(29.8%)が上位を占めた。
「チーム内での仕事の配分の見直し」が効果的と答えた人(48.5%%)に対して、「管理職の時間管理スキルの向上」が効果的だと答えた人は22.2%にとどまった。
「チーム内での仕事配分の見直し」や「勤務開始・終了時間を効率的に把握する仕組みの導入」が求められること、勤務間インターバルに関する相談窓口の設置などが急がれることと同時に、管理職の時間管理スキルのさらなる向上によって、勤務間インターバルの効果や仕事の効率化が高まることが予想される結果となった。
また、勤務間インターバル制度導入の障壁として考えられることに、30.3%が「管理職の長時間労働化」と答えた。
次いで、「全員分の勤務管理の手間」が28.7%、「すでに人手不足で悩んでいるため」が26.9%、「勤務間インターバルに対応するための社内ノウハウがない」の23%が上位を占めた。一方、「売上利益に影響が出そう」と答えた人は7.3%と、最下位だった。
育児休業制度について、「自社で男性の育児休業取得者がいる」と答えた人は48.7%で、前年(2021年)円と比べて6.7ポイント増えた。
「男性の同僚が育児休業を取得することに賛成する」人は75.7%で、同4.4ポイント増。「自分もしくはパートナーの男性の育児休業取得への希望」も72.8%で、じつに10.7ポイント増え、いずれも前年度を上回った。
また、男性の育児休業者が「不在」の企業に、その要因を聞くと、「経営層からのメッセージ発信の強化」との回答が51.4%と、最多。「職場全体の残業削減が進んでいない」が43.9%、「収入に対する補填がない」の40.2%が続いた。
男性の育児休業の取得を希望する人が72.8%と、取得希望者が半数以上にのぼるにもかかわらず、それが実現できない背景には、「経営層からの発信がない」ことや残業に頼った働き方からの脱却があげられることから、経営層の意識改革が急がれる。【図5参照】
また、男性の育児休業者がいる企業に、より満足度高く育児休業を取得するために「まだ取り組みが進んでいないもの」を聞くと、65.7が「転勤制度の廃止」が必要であると答えたことがわかった。より踏み込んだ働き方改革が必要であることがうかがえる。【図6参照】
今年は企業に育児休業制度の通知・取得促進が義務付けられたことで、男性の育休への関心が高まった。また、2023年4月1日からは労働者が1000人を超える企業では、育児休業の取得状況の公表が義務付けられる。こうしたことから、さらに男性の育休推進の動きは強まるとみられる。